イノベーションのジレンマ
マイクロソフトが時価総額1位を維持すれば、「イノベーションのジレンマ」を巨大企業が克服できた稀有な例となるだろう。
1997年にクレイトン・クリステンセン教授が発表した同名の著作で提唱されたこの理論では、成長著しい企業が全てを“正しく”進めたとしても、予期せぬ新たな競合に市場を圧倒され、市場のリーダーシップを握ることができず、破綻してしまうことすらあるとされる。
同理論ではその原因として、既存の革新的製品の改善により得られる価値はある時点を境に下がっていく一方で、新興の小規模なイノベーターは既存の大きな顧客基盤からのプレッシャーがなく、継続的な成長を示す必要もないため、隙間市場で迅速に成果をあげて最終的に市場を支配できる、と説明されている。
クリステンセン教授による独創的な“破壊的イノベーション”の理論は、世界中のCEOのイノベーションに対する考え方を変えた。中でもナデラは、これに正面から取り組んだ現代のリーダーの好例といえる。
「マイクロソフトの前リーダーの下では、現在のような状況にはなり得なかっただろう」とジョンソンは語る。しかしリーダーシップを再び発揮したマイクロソフトは今後、クリステンセンの提唱したジレンマに再び陥らないように気をつけなければならない。