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所属タレントネコ第1号のmaro君(インスタグラム @rinne172 より)

松竹(東京都中央区)とメールマガジン配信サイト「まぐまぐ」の創業者として知られる大川弘一氏が、ネコのタレントマネジメントに特化した専門の会社を共同で設立したことがわかった。その名も「ニャーチク芸能株式会社」。エンターテイメント業界の老舗・松竹が人間以外のタレントマネジメント事業に乗り出すのは初めてのことだ。

まず「ニャーチク芸能」の社名のインパクトに驚く。社長を務めるのは松竹取締役で松竹芸能(松竹の100%子会社)会長の井上貴弘氏だ。松竹芸能の前社長でもある。副社長は大川氏がつとめる。


井上氏(左)と大川氏

ラジオ、映画、テレビ、ブログ、YouTube…新たなメディアやエンターテイメントが生まれる度に、その媒体に適したタレントやインフルエンサーが生まれ、マネジメントの構図ができてきた。

SNSでの人気を受け、国内外ではすでに犬やネコなどのインフルエンサーを囲い込むする動きが見られるが、芸能の老舗・松竹が乗り出したことで、より動物のタレントマネジメント事業が活発化しそうだ。

所属第1号タレントは12万フォロワー

5月に会社設立登記を済ませ、すでに所属タレントとなる専属ネコ第1号とも契約を済ませた。その名もmaro君。2013年9月生まれの5才。ブログやインスタグラム上で活躍中で、インスタグラムのフォロワー数は12万を超える。 


maro君インスタグラム(@rinne172) より

キリッとした目力と美しい毛並みが魅力で、スーツから着物、革ジャン、季節にまつわる衣装など様々な服や小物を身に着け、凛々しくポーズを決める姿が幅広く人気を博している。小物や食卓に並べる料理、カラーコーディネート、ポージングまで、投稿写真の演出も見事で、飼い主のクリエイティビティがmaro君の魅力を引き出す。


maro君インスタグラム(@rinne172) より

スカウトの対象になる候補ネコは当初、調査で5匹まで絞られ、そこからさらに慎重な審査の結果、群を抜いて目力の強いmaro君の飼い主にコンタクトを取ることになった。

ネコじゃらしを持って「専属マネジメント契約」

「こんにちは、松竹が新しく始める『ニャーチク芸能』と申します。突然ですが、タレント猫になりませんか。あやしいですよね。わかります。ダジャレですもんね。だけど本気も本気。猫じゃらしを持って日本中お伺いさせていただきますので、お話だけでも」と飼い主にメールを送った。

数日後、飼い主から返事が来た。「たいへん驚いています。家族とウチのマロに何ができるかわかりませんが、もしお越しいただけるということであればいつでもいらしてください」

そして井上氏、大川氏自らmaro君と飼い主の住む大分県に出向き「専属マネジメント契約」を済ませた。


歌舞伎のPRキャラクター「かぶきにゃんたろう」と写真に収まるmaro君


maro君との契約時、夢中でシャッターを切る井上氏(右)

「飼い主(以下「甲」という)は松竹株式会社(以下「乙」という)は、甲の飼育にかかる猫の「マロ」くん(【キジトラ白】以下「丙」という)のマネジメントについて、次のとおり契約(以下「本契約」という)を締結する。…」。タレント契約さながらの契約書は、松竹の法務室が整えた。レベニューシェアモデルである。

「ニャーチク」全会一致 松竹の強み

以前から交流があったという大川氏と井上氏。約1年前、近況報告の場で大川氏より井上氏に提案があった。「ネコのタレント事務所を始めませんか。社名は『ニャーチク芸能』で」。突然の申し出だったが、井上氏は「おもろい…。やりましょう!」。

背景には近年、インスタグラムなどのSNSでペットアカウントが爆発的な人気を博していることがある。特にネコの需要は高く、数十万人のファンを抱え、人間のインフルエンサーに匹敵する人気を誇る「インフルニャンサー」も少なくない。

「発想が面白いなと思いました。タレントのマネジメントは当社グループのノウハウの蓄積が応用できますから」と井上氏。松竹芸能の前社長ということもあり、所属芸人らタレントの才能は唯一無二の特別な能力だと肌で感じていた。それは人間も動物も同じ。タレントを見出し、育て、マネジメントするノウハウをネコのインフルエンサーにも応用できると考えた。

1895年創業、120年余の歴史を持つ松竹社内を説得するため、新規事業としての将来性や具体的なスケジュールなどを詰め、井上氏自ら事業計画書を作成。ネコ好きの武中雅人専務取締役の支援も得て、満を持して松竹の取締役会にかけた。

「えー、次の議題は、新規事業『ニャーチク芸能』についてです」

井上氏の予想に反して笑いは起きず、役員は「面白いじゃないか…」と真面目に盛り上がり、全会一致で通ったそうだ。

名刺のキャラクターは知財として専属契約したネコ『イッチャマン』だ。



「あらゆるUIに適応することができる」

ネコはインターネットでは初期からアスキーアートで描かれるなど、とりわけ愛される存在として君臨してきた。大川氏はこう語る。

「インターネットはOSから始まり、ブラウザ、ポータルサイト、スマホ…と、誰が1番ユーザーの視界を獲得するか、という競争を行ってきました。しかしながらその領域に今から参入するには多額の先行投資がかかる。そうなると僕らのスタイルではないので、どのプラットフォームとも親和性の高い『ネコ』を事業領域に選びました。かわいいし」 

大川氏はこうも語る。「ネコ専門のマネジメント会社と言っても実際に現場に出向くことはほぼありません。専属契約をするのは既にメディアとしての影響力を持っているネコたちが対象で、広告を希望する商品とのマッチングや新規商品の開発も積極的にお手伝いしたいと考えています。プロ野球チップス的なことがカリカリ餌でできるようになれば我々もゴロゴロ言ってしまうことでしょうし、そういった楽しい提携ができるパートナーを待っています」

リスクは、と問うと、「人間と違ってスキャンダルはないですよね」と大川氏。「そうですね。激太りということはあるかもしれませんが」と井上氏。 大手の参入で、動物のタレントマネジメント分野が盛り上がりをみせるかーー。

文=林亜季

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