「炎天下の車中に置き去りにされて死んでいく、不幸な子供たちを一人でも減らしたい」
そう話すのは、テルアビブ本拠のスタートアップ「ガーディアンオプティカル(Guardian Optical technologies)」のCEOのギル・ドータン(Gil Dotan)だ。同社が開発したセンサーは車内の天井から全搭乗者の生体データを取得。車内に置き去りにされた乳幼児のわずかな心臓の鼓動を探知し、アラートを発信。自動的にエアコンを作動させるなどのシステムを作動させる。
ガーディアンオプティカルは、2017年に日本のスパークスグループが運営し、トヨタ自動車と三井住友銀行らが出資する「未来創生ファンド」から510万ドル(約5億8000万円)を調達した。ドータンに話を聞いたのは、10月29、30日にテルアビブで開催されたモビリティ関連のイノベーションに特化したカンファレンス「スマート・モビリティ・サミット(Smart Mobility Summit)」の会場でのことだ。
ネタニヤフ首相の主導で始まったこのサミットは今年で6年目。スタートアップ立国を掲げるイスラエルの存在感は、モビリティ分野においてもここ数年で飛躍的に高まった。
グーグルは2013年にマッピング企業「Waze」を10億ドルと伝えられる金額で買収した。2017年にはインテルが150億ドル(約1兆6500億円)という驚愕の金額を投じ自動運転支援企業の「モービルアイ」を買収した。そんな中、日本の自動車業界もイスラエル向け投資を活発化させている。
「イスラエルのテクノロジーを日本車に導入することで、一気に市場を拡大させたい」と語るドータンは1981年生まれの37歳。2009年にテルアビブ大学の機械工学科を卒業後、ヒューレット・パッカード(HP)に入社した。
「HPでは世界中のスタートアップ企業をリサーチし、有望な企業をスカウトする部門にいた。様々な起業家と触れ合ううちに、自分も起業したくなった」と語る彼は、過去に日本企業で勤務した経験も持つ。
ガーディアンオプティカルのセンサーは車内の天井から、搭乗者の位置や体型、姿勢などの情報が取得可能。集めた情報をもとにビッグデータビジネスの展開も検討している