第4回目のゲストは、日本フェンシング協会会長の太田雄貴。北京オリンピック銀メダリスト、世界選手権金メダリストに輝いた太田は、31歳という異例の若さで同職に就任。スポーツ業界の慣習にとらわれない改革を次々と打ち出している。
そんな太田がダイバーシティの観点から見るスポーツ界の様々な課題について語った。
スポーツ組織はビジネス業界より20年遅れている
杉山:僕も昔は女性としてフェンシングをしていて、日本代表になったこともあります。なので太田さんとも会場で顔を合わせていたんです。引退後、久々に再会したら「女子の先輩が男になってた!」って言われましたよね(笑)。
太田:杉山さんは女子なのに男女混合のクラブチームでキャプテンを務めていたのが印象的でした。その後しばらくはご縁がなかったのですが、僕の妻が杉山さんの後輩だったんです。
杉山:女子校の後輩ですね(笑)。彼女とフェイスブックで繋がったら、共通の友人に太田さんの名前があって。その辺りからまたよくご一緒するようになりましたね。
太田:私自身はこれまでLGBTに大きく関わったことはなかったのですが、杉山さんと話しているうちに彼らも僕らと全く変わらないと実感しました。
杉山:本日はよろしくお願いします。
太田:よく「スポーツ組織は、ビジネス業界より20年遅れている」といわれます。組織内での暴力沙汰が報道されるくらいだから、あながち間違いではないでしょう。
日本はようやくビジネス業界でLGBTを意識した活動が始まったくらいですが、スポーツ業界でもやらなければならないことはたくさんあります。
杉山:リオではオリンピックとパラリンピック、合わせて60名以上のカミングアウトをしている代表選手が出場していましたが、そのうち日本人は0人でした。
カミングアウトをするということは、相手を信頼しているということでもあります。これは対社会でも対個人でも同じで、裏を返せばカミングアウトする人が出てこないのは、信頼関係ができていないという意味でもあります。カミングアウトすることで相手との関係性が壊れることに対する不安があるからです。
知り合いのメダリストかつLGBT当事者の方も、協会との軋轢や地域のヒーロー像を壊してしまうことを心配して、カミングアウトを躊躇していました。
太田:私も、組織のメンバーから直接カミングアウトをされたことはありません。フェンシング協会でLGBTに関する直接的な問題は起こっていませんが、悩んでいる方はたくさんいるはずです。
スポーツ業界が取り組まなければいけないことは、本当にたくさんある。アスリートたちが気負わずロールモデルになれる環境づくりはもちろん、アスリートたちが実践できる支援活動も考えなければいけません。