─少子高齢化、人口減少が進む日本において、次世代型のヘルスケアには何が必要でしょうか。
高齢化は社会問題だといいますが、本当にそうでしょうか。長寿は本来いいことです。重要なのは健康寿命を延ばすことです。慶應大学精神科の調査によると、認知症の社会的コストは年間15兆円に上ると推計されています。認知症の多くは根本的な治療法が見つかっておらず、10年先までその状況は変わらないと言われています。
ただし、早期対応によって悪化を食い止めることは可能です。病気を治すという視点も重要ですが、病気になる前の兆候を見つけてサポートを行うことで15兆円の資源が新しい可能性に変わります。人々の多様な価値にあわせて、ヘルスケアのあり方も根本的に変わっていくでしょう。
医師の役割も変化しています。海外では、医師の仕事がAIに奪われることを懸念する声をよく聞きます。一方で日本は医師不足の地域が多い。「私の後継者はAIだ」と言うシニアの医師もいます。AIをトレーニングして、社会システムとして育て、次世代に渡す。人手不足を補い、効率性を最大化しないと日本がもたないからです。ピンチを逆手にとって、世界をリードする新しい社会システムをつくるチャンスだともいえるでしょう。
みやた・ひろあき◎1978年生まれ。保健学博士。東京大学大学院医学系研究科医療品質評価学講座の准教授を経て、2014年に同講座教授に就任。15年から現職。臨床データベースNCD(National Clinical Database)立ち上げに従事。