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日本の不動産最前線

metamorworks / Shutterstock.com

修繕積立金は、所有者全員の積立貯金のようなものだ。これを原資として将来の大規模修繕に備えるわけだが、早ければ2回目、遅くとも3回目の大規模修繕となると多くのマンションで積立金不足といった事態が生じている。

この時、所有者各々が数10万~100万円単位の一時金を拠出して修繕出来ればいいが、全員が足並みを揃えて拠出できるケースというのは非常にまれ。管理組合でローンを組んで大規模修繕を支払い、修繕積立金をアップさせることでローン支払いをしていく手もあるが、これもうまくいかないことが多い。

当初は毎月5000円程度だった修繕積立金が、いきなり3万円にアップするなどというのは、家計によっては受け入れられない場合があり、管理組合総会で否決されることも多い。そうなるとせいぜい、今ある手元資金でできることだけをやるとか、何もしないといった選択とならざるを得ず、建物はどんどん陳腐化……。購入・賃貸予備軍にも魅力的な建物になりえず、資産価値を下げることにつながるうえ、適切な修繕をしておけば100年以上長持ちするところ、建物の寿命を一気に短くする。

なぜ多くのマンションがこうした負のスパイラルに陥るのか。それは「新築マンション販売時の修繕積立金設定」にある。

買いやすい価格にするために

新築マンション購入時には「売買価格や諸費用」のほか「住宅ローン返済額」「管理費」「修繕積立金」などが提示される。購入者からみれば、毎月家計から出ていくこれらの出費は少ないに越したことはない。そこで住宅ローンについては極力低金利の金融機関やローン商品を探す。一方で、管理費や修繕積立金について購入者に選択の余地はなく、あらかじめ売主に提示された額を容認するかどうかといった選択しかない。

売主からみれば、管理費は極力高めに設定しておきたいところ。というのも、ほとんどの新築マンション販売のケースであらかじめセットされているのは、売主系列の管理会社。つまり管理費(のうち管理委託費)は、引き渡し後もグループ会社に毎月流れてくる売上であり利益だ。

一方で修繕積立金は、所有者で構成する管理組合がプールする貯金で、売主には直接関係ないため、どうしてもここを極力低額にして、ローン・管理費・修繕積立金の合計額を下げることで購入のハードルを下げる、つまり売りやすくするといった意図がある。低額に設定した修繕積立金のツケは、10年後15年後などに積立金が数倍にアップする、数十万円単位の一時金を拠出するといった計画となっていることが多い。

文=長嶋修

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