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2018.11.10

米テック業界が大反発の「ホームレス税」、可決までの舞台裏

(Getty Images)

米サンフランシスコではホームレス問題の解決に向けた資金を捻出するため、大手企業に新たな税を課す法案が11月7日、住民投票により可決された。この法案の正式名称は「Proposition C(Prop C)」だが、フィナンシャル・タイムズ等の大手メディアは「ホームレス税」との呼称で、このニュースを報じている。

法案は今年夏に2万8000人の署名によって提出され、今回の投票で60%の有権者の支持を得た。ホームレス税が正式に導入された場合、年間5000万ドル以上の収益がある企業は最大で0.69%の法人税を追加で支払うことになる。これにより、年間2億5000~3億ドル(約340億円)の新たな税収が見込めるという。

サンフランシスコのホームレス人口は、2007年から2017年にかけておよそ20%増加し、推定7500名に達している。この問題の解決に向けて当局は、全てのホームレスの動きを監視することも検討している。

ホームレス税導入の是非をめぐっては、サンフランシスコのテック企業の多くから反発の声があがっていた。一方で、この法案の最大の支援者はセールスフォース・ドットコムのマーク・ベニオフCEOで、彼は法案の制定を推進する運動に、210万ドルの個人資金を投じていた。

セールスフォースの売上は130億ドルに達しており、同社は1000万ドルのホームレス税を支払うことになる。税収は5000人分の住宅建設費や家賃補助などにあてられる。

しかし、ツイッターCEOのジャック・ドーシーらは「ホームレスの待遇を改善すると、他地域からのホームレスの流入が増え、問題が悪化する」と反発していた。

ストライプの共同創業者でCEOのパトリック・コリソンもドーシーの意見に同調したほか、ゲーム企業Zynga共同創業者のマーク・ピンカスも反対していた。また、セコイアキャピタルのマイケル・モリッツも反対の立場をとり、彼らは合計で32万5000ドルの自己資金を、この法案の反対派に投じていた。

一方でベニオフが運営するセールスフォースは企業として600万ドルの資金を、法案の成立を目指す委員会に寄付していた。

また、今年6月にサンフランシスコ市長に選出されたロンドン・ブリードも、ホームレス税の導入には反対の立場をとっていた。

配車サービスのリフトもホームレス税の導入反対派に10万ドルの資金援助を行っていた。フォーブスの取材にリフトの広報担当は「当社はブリード市長と同意見だ。ホームレス問題の解決に向けては、合理的なアプローチが必要だ」と述べた。

編集=上田裕資

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