ビジネス

2018.11.08 15:00

経験と直感の時代は終わり 「A/Bテスト」が勝者を教えてくれる


データと証拠に基づく経営判断を

Optimizelyは現在、マイクロソフトやIBMをはじめとするフォーチュン100企業26社のほか、VISAやニューヨーク・タイムズなどを顧客に持ち、デジタルエクスペリエンス・オプティマイゼーション業界のリーダーに君臨している。製品は大別して2種類。営業職やバックオフィスも容易に扱えるウェブ製品と、顧客が開発したアプリなどのバックエンドで使える、技術者やデザイナー向けのフルスタック製品だ。

前者の場合、顧客は2~3のバリエーション(選択肢)を用意すれば、Optimizelyのプラットフォームが“勝者”を教えてくれるのでアナリストやデータサイエンティストを雇う必要がない。例えば米ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、編集者が記事のタイトルを変えることで閲覧率を高める「ヘッドライン・テスティング」として活用している。

加えて、顧客は実験したい対象を選ぶことができる。仮に小売り企業がオンラインセールを開く場合は全トラフィックの5%に絞ってテストできる。しかも短時間で“勝者”がわかるのでそのバリエーションを全体に適応することも可能だ。銀行や保険会社なら、富裕層顧客向けにピンポイントで金融商品を売り込める。後者のフルスタック製品ならば、ウェブやアプリなどの自社製品はもちろんのこと、IoT製品にも応用できる。

デジタル製品は将来的には格段に増えるので、市場は広がる一方である。だがラーソンは、同社の製品で「ビジネス上の意思決定に科学的手法を適用する」ことが何よりも意味を持つと説く。

かつてはアイデアがあってもそれを試すのは容易ではなかった。データへのアクセス手段も量も足りなかった。ところが、デジタル化によって世界は一変。今日、誰もが膨大な量のデータを持っている。その結果、厳密なレベルで「エクスペリメンテーション」ができるようになったのだ。

「潜在的顧客には『デジタルから“当て推量”を取り除く』のが目的だと説明しています。ウェブサイトやアプリを作るときに、当て推量ではなく、実験を通じて得たデータで売り上げを伸ばすことができるのです。それに大きなプロジェクトの場合は、実験をすることで“リスク”も減らせます」と、ツカハラは語る。デジタルビジネスの世界でも経営者は直感と経験に基づいて決断しているが、「その前提となるデータが足りていない」と、ラーソンは指摘する。

「A/Bテスティング」はそれらの問題を解決しうるが、そのポテンシャルが十分に理解されているとは言い難い。それでも、ラーソンは自信を隠そうとしない。

「ビジネスマネジメントで次に最も重要なものだと確信しています。これから成功する企業は間違いなく『エクスペリメンテーション』を実行しているでしょう」

文 = 井関庸介 写真 = ラミン・ラヒミアン

この記事は 「Forbes JAPAN ストーリーを探せ!」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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