キャリア・教育

2018.11.08 07:30

子どもの金融教育、最高の教材は「親が楽しむ姿」


「親が楽しんでいる姿」を見せるべし

それでは、「適切にお金のことを教える」とはどういうことか。それは、お金を汚いものや、ずるいもの、危ないものというような、間違った認識を持たせないことである。そしてなにより、ある程度のお金を持つことは人生の質の向上につながるということも教えるべきだろう。

筆者は釣りが趣味なのだが、釣りの前日は部屋でその準備をする。子ども達は興味津々で道具を見に来るが、釣りをするわけではないので、釣り具のことは分からない。だが、ルアー(疑似餌)などキラキラしたものなどがあると、宝物に見えるのだろう。

釣り当日、筆者は釣れた魚を持って帰り、調理し、その夜の食卓に並べる。子ども達から見ると、釣りの前日から当日の夜までの筆者はとても楽しそうに見えるそうだ。

その楽しげな姿を見て、自分たちも欲しいものを買って、好きなことに夢中になりたいと思うようなのだが、「そのためにはお金が必要」「親は仕事をしているから、お小遣いだけの自分たちよりも買いたいものが買える」と認識しているようだ。

「なんでお父さんは好きなものを買えるの?」と子ども達が聞いてくるので、「一生懸命お仕事をするから、お金がもらえて、そのお金でみんなのご飯代や学費を払う。それでもお金が余ったら、将来の為に貯めたり、好きなものを買ったりするんだよ」と伝える。こうした何気ない会話の中で、子供たちはエッセンスを理解していくのだ。

お金は人生の質を向上させる。そのために労働する。少なくとも、現時点では子ども達が適切にお金というものを理解しているように感じる。

方法論を学ぶより大事なこと

さて、これまで3つのストーリーを共有した。子どもは想像以上に大人の影響を受けるということ。子どもはお金のことを認識して理解しているということ。そして、大人が楽しむ姿を見せることで、お金を持つことにポジティブな印象をもたせるということ。

これらの要素があれば、何も教えなくても子どもは自然とお金について学んでいく。つまり、誰にでも金融教育は出来る。ただそこで、お金についてネガティブな認識を植え付けないようには注意が必要だ(筆者の蛾の経験のように)。

金融教育において、簡易な言葉で、お金の概念論や経済学、ファイナンスを学ばせる方法論はある。しかし、その前にお金に対する正しい認識を持たせないと、そもそも何のためにお金について学んでいくのか、その目的がぼやけたままになってしまう。

そのお金への正しい認識を持たせるのは、なによりもまず、親が日常生活の中で学ばせていくしかない。今回の話を読んだら、ぜひ、ご家庭で早速子供に声をかけてみて欲しい。

【連載】0歳からの「お金の話」
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文=森永康平

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