米紙ウォールストリート・ジャーナルに先日掲載された記事では、チームワークや素早い学習、高いパフォーマンスを生む最も効果的な要素がエゴ(自負心)ではなく、謙虚さだとする複数の研究がまとめられている。同記事はまた、現代企業のリーダーにとって、謙虚さの価値がますます認められるようになっていると報じた。
カリスマCEOの迷信
「CEOゲノムプロジェクト」は、リーダーの成功の秘訣を探るべく数千人のCEOを10年間にわたり調査した。その結果、カリスマ的で独裁的という従来の典型的なCEOのイメージはもはや時代遅れで、大きな修正が必要なことが分かった。
最も意識的なリーダーは、人々の仲を取り持ち、つながりを構築する。こうしたつながりには、CEOと経営陣のつながり、管理職とチームのつながり、従業員同士のつながりに加え、ブランドと企業理念、企業、顧客のつながりも含む。
知識経済の中では、逆説的ではあるがリーダーが全てを理解する必要性は減っている。最善のリーダーは、専門家同士を結びつけるゼネラリストになりつつあるのだ。こうしたリーダーは、協働とイノベーションの環境を作り出し、従業員のすべきことを支配する代わりに一歩離れて見守っている。
現代のリーダーに最も必要な知識とは人に関する知識であり、その開始点となるのが自己理解だ。
謙虚なリーダーは、自分の限界を理解し受け入れ、自分の知らないことを認めている。こうしたリーダーは、必要な支援やインプットを求め、他者に遠慮なく仕事を任せることができる。そのため、従業員に褒め言葉や金銭的報酬を惜しみなく与え、優秀な人材を昇進させることができるのだ。チームは自分たちの価値を認められ、評価されたと感じ、良い働きぶりを維持しようというモチベーションが湧く。リーダーは自分よりも大きく、長く続く企業文化を構築する。
権力を共有
自信のないCEOは、権力を限りある資源と考え、慎重に守るもの、共有する場合も気をつけるべきものだと考えている。一方、大きな自信と良識を持つ謙虚なCEOは、権力を共有すべきものだと考える。
リーダーが権力を共有すると、従業員やチームに自信を持たせることができる。また、権力はエネルギーとして見ることも可能だ。リーダーが従業員に権限を与えると、従業員はエネルギーを感じる。信頼できる同僚にアイデアを与えてそれを実行してもらえば、相手に時間と労力以上のもの、つまり相手の一部を投資するよう促すことができる。
知識経済では、エネルギー(アイデアや取り組み、イノベーションのエネルギー)は再生可能な資源だ。最も優秀な人材を信じれば、その投資は何倍にもなって返ってくる。