ビジネス

2018.10.29 16:00

イタリアンモードの重鎮に聞く「ファッション、トレンド、未来」


──メンズファッション業界におけるピッティのポジションとは?

イタリアの伝統的なサルトリアスタイルから海外のアバンギャルドなスタイルまで、ありとあらゆるジャンルのブランドをまとめて見ることができるピッティは、メンズファッション界で唯一無二の存在です。イタリアだけでなく世界の服飾業界や経済に与える影響は大きく、大変重要な責任を伴うポジションにあると自負しています。

──近年におけるイタリアのメンズファッション産業の変化の傾向は?

統計にも表れているとおり、輸入が減り生産が増えてきています。これは、長らく海外に流出する傾向にあった生産工程が、海外の人件費の上昇によってコストダウンに繋がらなくなり、より目の行き届くイタリア国内生産へと戻す企業が増えてきたことによります。

──新ブランドのトレードは、どのように受け入れているのでしょうか?

新ブランドの出展は通常数年待ちとなりますが、我々運営グループによる審査によって特に興味深い、または時代のニーズに合っていると認識されたブランドは、できるだけ早くプレゼンテーションの場が持てるように特別な検討の対象となります。

──今シーズンはどのようなトレンドが見受けられますか?

ここ数年、世界的にエコという言葉が頻繁に聞かれるようになり、素材や生産方法に何らかの形でエコシステムを取り入れるブランドが目立ってきています。ファッションという枠を超え、ライフスタイルや地球環境の向上に貢献しているか否かということが、今シーズンでも注目すべき大きなポイントになっています。

──今後目指す方向は?

能力あるクリエイティブな若い世代がチャンスを掴み、思う存分に活躍することができる場を提供するために、今後も常に変化する世界の動向へアンテナを張り、新しい分野やアイデアを率先して受け入れていきたいですね。そのためにも、ピッティの活動の中核的存在である、1999年発足のピッティ・ディスカバリー財団の存在はとても大きいと言えます。

単に服を売る産業としてのモードではなく、アートや建築、文化全般と繋がりを持つことでクリエイターたちに刺激と新たな活動形態を与え、同時にさまざまな分野がモードと繋がることで活性化していくという相乗効果をもたらすようなプロジェクト活動を、財団と共に目指していきたいと思っています。


ラファエッロ・ナポレオーネ◎1954年ローマ生まれ。89年より世界最大級の紳士服見本市ピッティを企画運営するピッティ・イマージネ社ゼネラルマネジャーを務め、95年同社CEOに就任。趣味はマリンスポーツで帆船ブローカーとしての経歴も持つ。

text by Minako Shimada edit by Shigekazu Ohno

この記事は 「Forbes JAPAN 世界を変える「30歳未満30人の日本人」」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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