2年ぶりに帰ってきた「フランス産」フォワグラ

フランス産フォワグラ


肝心のフォワグラは……もちろん美味しかった。でもブリオッシュにもりもりと乗せて口へ運んでも3枚がせいぜい。バター半分ほどでギブアップした、ほろ苦い思い出です。

「そうでしょうね。フォワグラはひとりで食べるというより、友人や家族みんなで楽しむものだもの」と教えてくれたのはフランス・レストラン文化振興協会の大沢晴美さん。日本におけるフランスの食文化振興のため料理コンクールを定期的に開催するほか、フランスの地方の食文化を紹介する活動に努めています。

「そもそも古代のエジプトでガチョウが家禽として飼われていたことがわかっており、そのレバーであるフォワグラもそのころから食べられていたと言われています。フランスではルイ16世の宮廷で食されたころからメジャーになり、いまでは主にクリスマスの時期に家族や友人で集まって食べるごちそうですね。主な産地はランドやペリゴールなど、フランス南西部です」

でも、最近フランス産のフォワグラを日本であんまり見かけないような気がするのですが?

「2015年にフランス国内の農場で鳥インフルエンザが検出されたことで、海外への輸出が制限されていました。でも2017年にフランス農業・食料省は鳥インフルエンザを清浄したと宣言し、輸出再開を許可。日本でも18年5月からようやく本場フランスのフォワグラを輸入できるようになったんですよ」

なるほど最近ではハンガリーなど東欧産のフォワグラを目にする機会が増えていたのは、そのような背景があってのことだったか。

でも私にはもうひとつ気になることが。それは、深夜にネットサーフィンしてつい見てしまったフォワグラの生産現場を映した動画。機械で固定したガチョウやアヒルの喉の奥まで管を差し込み、栄養価の高い餌を流し込んでいる“強制給餌”の模様でした。動物に過度な苦痛を与えてまで美食を追及したくないなぁ、なんて。

「それはフランスではなく、ほかの国の生産現場をご覧になったのですね。もともと農業国であるフランスでは食に関する法律が大変厳しく整備されていますが、フォワグラについても同じ。たとえば、フランスでも高品質の生産を誇るサラド社では、良質なフォワグラのためなのはもちろん、動物福祉の観点からも、家禽を閉じ込めずに放し飼いにし、給餌は個々の体重に応じて1回何グラムまで与えるか、非常に厳しく管理しています。冬に向け、ますますおいしく感じられるフォワグラをたくさん召し上がっていただきたいですね」


高品質なフォワグラ生産で知られるサラド社のガチョウたち。

奇しくも今年は日仏交流160年の年。多くの展示、公演などが予定されているが、私もいつにもましてフランス産のワインや食材に親しみ、個人レベルでの友好に努めるとしましょうか。ただフォワグラはひとりじゃなくて、親しい友や家族とにぎやかに味わうべし。これだけはお忘れなく。

連載:いまおいしい、いま知りたい食のトレンド最前線
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文=秋山 都

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