若手ビジネスパーソンに伝えたい、「下積み期間」が持つ本当の意味

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グローバルの人材育成の理論や実践に触れていると、日本独特のカルチャーの存在に気づくことがある。

例えば、企業が足並みを揃える「新卒一括採用」の統一ルール。スペシャリティではなくポテンシャルを見込まれた真っ白な新人たちが一斉に大量採用され、数年単位のジョブローテーションによって経験を積みながら、その企業の文化に染まっていくというのが、日本企業独自の“若年層育成メソッド”だった。

しかし、この統一ルールに関しては、先日経団連が「やめる」と方針を打ち出した。今後は景気に左右されず、企業が「採りたいときに採る」雇用計画が広がっていくのではないだろうか。

もう一つ、「下積み」という考え方も、日本特有の若年層育成において馴染み深いものだ。

若い時こそ手足を動かす地道な仕事を率先して経験し、基礎力を積み上げていこうという習慣文化。美談めいたニュアンスをもって語られることも多い言葉だが、「俺も若い時は泥臭い仕事ばかりやっていたんだよ(だからお前も頑張れ)」と先輩や上司から言われてうんざりしたという経験は、誰しもあるのではないだろうか。

この「下積み」という考え方に対して、私はどう思うか問われたら「とても大事だ」と答えたい。

下積み“期間”は存在しない

まず、「下積み」という言葉について私なりの理解を述べると、それは「基礎基本を叩き込む舞台裏の努力」ではないかと思う。

どの業界においてもスピードが求められる時代には、瞬時に最高の力を出せるパフォーマンス能力が問われる。そのパフォーマンス能力を支えるのが、高い基礎能力だ。スポーツでいえば、瞬発力や持久力、予期せぬ状況変化に追いつく対応力など、地道なトレーニングで磨かれる基礎力が本番でモノを言う。これは仕事でもまったく同じことが言えるだろう。

つまり、仕事の基礎力を磨くトレーニングが誰にとっても必要であることは間違いない。ただし、それが「若者限定か?」というと、そうではないと思う。

下積みは期間で区切るものではなく、デイリーで組み込んでいくもの。つまり、新人であろうと10年選手であろうと30年選手であろうと、毎日の活動の中で“基礎トレ”は続けていくべきだし、そういう習慣を続けている人が結果も出し続けているように感じる。

スポーツの世界でも、試合で華やかな活躍を見せるトップアスリートほど、地道な基礎トレーニングを毎日欠かさず続けている。同じように、「カリスマ」と呼ばれる経営者が、実は新人時代から欠かさない情報収集のための時間を毎朝必ず確保しているといった事例はよくある。
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文=中竹竜二 構成=宮本恵理子

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