アルゴリズムが自分に合う学び勧めてくれる?
膨大な学習データが集まってくると、それを解析したシステム側から「現時点の理解度で、あなたのような学びの特性を持っているのであれば、今はこれがオススメですよ」と言ったレコメンデーション機能もできてくるのか? と聞いたところ、それはもう少し未来の話になるようである。
現在このシステムを使っている生徒は1万人程度だが、10万人を超えてくれば、アルゴリズムを組み始めるのに十分な情報が集まるのではないか、とVentilla氏は語る。現段階から、年間を通じて25の観察項目を決め、それらについて生徒たちがどういった反応を、なぜしたのか、データを蓄積し始めていると言う。
10万人の生徒に届けるために
この「10万人」という数字に届くためには、いくつかの条件を満たす必要がありそうだ。
まず当然、Lab School以外でも多数の学校がAlt Schoolのシステムを導入することが必要だが、それには各学校での教員研修が欠かせない。生徒が学びの主導権を握るという逆転の発想に、現場の教員がどのくらい適応できて、この仕組みを積極的に活用することができるのか、が鍵を握る。
また、Lab Schoolのカリキュラムをそのまま導入することも可能ではあるが、一般的には学校や自治体によってカリキュラムが既に決まっているため、これらをAlt Schoolのシステムにアップロードすることが容易にできなければ普及は難しい。現時点で、主だったカリキュラムプロバイダーの内容には対応しているとのことだが、個別の学校の膨大な量を読み込んでいくためには、ある程度の人海戦術を取らねばならない。
「2019年は海外展開の年にしたい」と言うので、日本語での展開を聞いてみたところ、「グーグル翻訳があるからね、そこは難しくないよ!」とVentilla氏。確かにグーグル翻訳の性能は日に日に上がっているが、果たして学校現場で使えるだけのものに仕上げるためにどれほどの手間がかかるのか……。
しかし重要なのは、こうした取り組みが始まっていることであり、その輪が広がりつつあることだ。
Ventilla氏は、「中途半端なアプリやソフトウェアを作って世の中に出す気はない。教育は、新薬の開発にも似ていて、本当に効果があると実証されなければ拡散すべきではない。だからこそR&Dに膨大な時間と資金を投じてきた。そしていよいよ、拡散していく局面に入ってきたのではないかと感じている」と語ってくれた。
「効果があると実証するって、具体的には何を測るの?」と投げかけると、「いわゆる学習成果だけでなく、培われる非認知能力も伸びることが証明できればベスト」だと言う。
Alt Schoolの創業から5年、Ventilla氏によれば7年ほどでR&Dの成果が出てくるのではないかと言う。2020年にこの教育事業がどんなインパクトを出しているのか、期待しながら待ってみたい。