米国の関税発動後、中国は両国の貿易問題に関する全般的な対応を示した「白書」を公表。このメッセージはその中に含まれるものだが、中国は米国のいじめを非難する前に、まず自らがいじめをやめるべきだ。
中国は南シナ海とアフリカで、他国を脅かしている。南シナ海ではフィリピンやブルネイ、マレーシア、台湾、ベトナムなどいくつもの国をいじめている。さらに、この通商航路でのさらなる航行の自由を確保したい日本の海上自衛隊と米国、フランス、英国、オーストラリアの海軍をいら立たせている。
数年前には南シナ海の領有権を巡るフィリピンとの紛争について、国連海洋法条約に基づく仲裁裁判所がフィリピンの主張を認める判断を示したにもかかわらず、「領有権を主張して行動すれば“戦争になる”」と同国のロドリゴ・ドゥテルテ大統領を威嚇した。
ベトナムを威圧するにあたっても、中国は「ドゥテルテ・モデル」を採用。両国が領有権を主張する南シナ海の海域でベトナムが行っていた石油の掘削作業について、「掘削基地を攻撃する」と脅し、中止させた。
そのほか米国の同盟国である日本に対しては、中国のイデオロギー的な「第二の大陸」に近づくなと凄んでいる。こうしたいじめが貿易や平和に加え、地政学的なリスクに反応する金融市場にとって良くないものであることは間違いない。
貿易は別問題?
ただし、中国が公表した白書に含まれる内容について、外国為替証拠金取引(FX)情報サイト「デイリーFX」のアナリストであるレネー・ミューは「いじめ」とは別の点に注目している。
「白書は米中間の最近の緊張の高まりについて、原因は主に米国の政策にあるとする一方で、両国間の貿易における過去の成果を強調している」
そのように言及することで、すでに米国を世界貿易機関(WTO)に提訴している中国が自国に有利な裁定を引き出すことにつながるかもしれないというのだ。
米中関係についてミューは、「中国は貿易に関する最近の米国の行動を列挙して批判している。だが、まだ交渉の扉を閉ざしてはいない」と指摘。(現時点で中国は)貿易交渉を進めることは困難だとしているものの、「数週間以内には、双方とも交渉のテーブルに戻ることになるだろう」との見方を示している。