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2018.09.26 18:30

レコード販売で大成功、CEOが語る「プレミア感を売る」ビジネス

Vinyl Me, PleaseのCEO マット・フィードラー(photo courtesy of Vinyl Me, Please)

Vinyl Me, PleaseのCEO マット・フィードラー(photo courtesy of Vinyl Me, Please)

デジタル音楽のストリーミングサービスが全盛の時代に、年商1040万ドル(約11億7000万円)のアナログレコードビジネスを5年間で築き上げた男がいる。マット・フィードラー、30歳。彼が始めたアナログレコードの定期購入サービス「Vinyl Me, Please」は、いまや全米3位のレコード販売数を誇る。

「過去3年の(売上高)成長率が約1400%になり、Inc.誌の“Inc.500”(最も成長が著しい米国企業のトップ500のランキング)で342位に入った」とフィードラーは言う。「この先も同じスピードで伸び続けるとは思っていないが、平均30〜40%の実質成長率は維持している」

コロラド州デンバー本拠のVinyl Me, Pleaseは、同社がリイシューしたアナログレコードを会員に毎月1枚届ける。オールタイム、オールジャンルの名盤で構成された「Essentials」、ソウル、ブルース、ジャズからなる「Classics」、ラップとヒップホップ中心の「Rap & Hip Hop」の3種類のコースがあり、月額は約29ドル。


(photo courtesy of Vinyl Me, Please)

会員は「Essential」を選ぶ人が全体の71%を占めるが、「今月のアルバム」が気に入らない場合は、他コースのアルバムや、同社のアーカイブにある他のアルバムと交換することもできる。また、オンラインショップでアルバムを個別に購入することも可能だ。

ノートリアス・B.I.G.「Ready To Die」(1994)から「The Voice of Frank Sinatra」(1946)、ニーナ・シモン「Sings the Blues」(1967)まで、目利きによる幅広いセレクトに加えて、Vinyl Me, Pleaseの売りはオリジナルの豪華なパッケージだ。洗練されたデザインのジャケット、鮮やかな色がついたレコード盤の他、さまざまな情報が掲載されたライナーノーツ、アルバムにインスパイアされたカクテルレシピなどがついてくる。「人々はプレミア感にお金を払う」とフィードラーは言う。

「Essentials」コースの9月のアルバム、ファイストの「Let It Die」(2004)では、アーティスト本人が音源のリマスタリング作業やアートワークの選定、ブックレットの制作などに深く関わっている。

「リイシューの全過程において、細部に至るまでファイストが関わってくれたことが素晴らしい」とフィードラーは話す。「『Let It Die』は彼女がブレイクするきっかけとなった作品で、今年は発売15周年に当たる。オリジナルのレコードが中古マーケットで100〜150ドルの高値で売られているのをみて、需要があると感じた」
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編集=海田恭子

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