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スペースXの無人補給船「ドラゴン」(Photo by Tim Peake / ESA/NASA via Getty Images)

イーロン・マスク率いるスペース・エクスプロレーション・テクノロジーズ(スペースX)は、誰も考えていた以上に低料金での打ち上げサービスを提供、市場を“破壊”した。だが、同社が行ったことはそれだけではない。

スペースXは他社に先駆けて開発した幾つもの技術によって人々の間に、宇宙産業はアマゾンの最高経営者(CEO)ジェフ・ベゾスやヴァージン・グループの会長リチャード・ブランソンといった富豪たちの単なる“遊び場”ではなく、成長が見込める事業を行うことが可能な分野であるとの見方を広めた。

そして、マスクはスペースXのロケット「ファルコン9」の第1段ロケットを回収し、再利用可能にしたのと同様に、国際宇宙ステーション(ISS)に宇宙飛行士を輸送する宇宙船も再利用可能にする計画を明らかにした。

さらにマスクは2014年、この宇宙船「クルー・ドラゴン」について、「エンジン出力によって正確な地点に降下する」ことが可能になるとの声明を発表。つまり、クルー・ドラゴンは海上に着水するのではなく、事前に決定した場所に着陸できるようにする考えを示したのだ。
クルー・ドラゴンは無人補給船「ドラゴン」を基に開発されたものだ。ドラゴンは海上に着水するように設計されているが、マスクは米航空宇宙局(NASA)の有人宇宙船「スペース・シャトル」を上回る技術を、自社で開発できると考えた。

一方、ISSへの宇宙飛行士の輸送を目指すもう1社、米ボーイングもまた、再利用可能な有人宇宙船の開発を進めている。同社の宇宙船「スターライナー」は、10回まで利用することができるという。

だが、スペースXはここ数カ月の間にほとんど注目を浴びることないまま、これらの目標を取り下げたもようだ。クルー・ドラゴンはドラゴンと同様、海上に着水させるという。そのため、その後は物資の輸送用としての再利用は可能であるものの、宇宙飛行士を輸送できるのは一度だけになる。

スペースXが自社の極めて重要なセールスポイントだったクルー・ドラゴンの計画をひそかに変更したことは、同社にとっては大幅な後退だ。再利用可能な宇宙船を開発するのは今後、ボーイング1社ということになる。

NASAが有人月・火星探査ミッションに集中するため、宇宙ステーションへの輸送を民間企業に委託する方針を決定したのは、企業が持つ技術は十分に前進しており、安全かつコスト効率よく輸送を行えると見込んだためだ。だが、宇宙飛行士の輸送業務に関する米政府の認可は、予定通りには進んでいない。

宇宙飛行士が搭乗した状態でロケットへの燃料供給を行うとしていたことなど、スペースXの計画については最近になって、いくつかの懸念が浮上していた。同社に経験豊富な宇宙飛行士がいないことも問題となっている。

スぺースシャトルに搭乗し、ISSに滞在した宇宙飛行士のギャレット・リーズマンは今年に入り、スペースXを退社。これにより、十分な経験を積んだ宇宙飛行士が社内にいるのも、ボーイングのみとなった。同社の宇宙飛行士クリス・ファーガソンはNASAの宇宙飛行士らとともに、スターライナーの最初の試験飛行に向けて訓練を続けている。

スペースXとボーイングはどちらも、まだ試験飛行にはこぎつけていない。業務に関する政府の認可に今後どのような違いが出てくるか、現時点では不透明だ。

編集=木内涼子

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