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2018.09.11

米ウォルマートが総額2億ドルのボーナス支給も非難される理由

Sundry Photography / Shutterstock.com

米小売り最大手のウォルマートは、従業員に“寛大な”姿勢を示している。時給制で働く米国内の店舗の従業員およそ91万5000人に先ごろ、総額2億ドル(約222億円)以上をボーナスとして支給した。

だが、米国内の労働組合が主導する活動団体「Making Change at Walmart(MCW、ウォルマートに変革を)」によれば、ボーナスは支給対象の従業員が“貧困”から抜け出すのに十分な金額ではない。

MCWは、「貧困から抜け出す必要がある数多くのウォルトマートの従業員たちに必要な賃上げと、ボーナス(一時金)は異なる」と指摘する。

「ボーナスは勤勉な従業員たちがこれまでに受け取る資格を手に入れているはずの負担可能な医療費や、年金とも異なる。ウォルマートは(最低限の生活水準を維持するための)生活賃金やその他の手当を支給することができたはずだが、そうしないことを選んだ。長年にわたって改善されないウォルマートの誤りは、ボーナスの支給によって正されるものではない」

また、「今回のボーナス支給は宣伝活動だ」との見方もある。同社で6年間働いているというある従業員は、時給11ドル(約1220円)の初任給から一度も昇給がないとして、次のように述べている。

「ウォルマートには、自社の成功を支援している勤勉な従業員たちのために一時金の支払い以上のことをする余裕があり、そうしたことを実行すべきだ。私も同僚たちも、生活を実質的に改善させるための生活賃金を受け取る権利がある」

ウォルマートは福祉事務所ではなく、資本主義的企業だ。主流派の経済学者らはそう言うだろう。ウォルマートは従業員のニーズではなく、彼らの生産性に応じて給与を支払うのだ。つまり、従業員たちによってもたらされる売上高で、彼らの賃金は決定される。

だが、ウォルマートの売上高はこのところ増加している。同社は8月、今年第2四半期(5~7月)の既存店の来店客数と平均客単価が2%以上増加したことを報告している。

ある株式アナリストは、「(ウォルマートの)業績は、事業を適切に運営し、効果的なマルチチャネル戦略を導入すれば、実店舗を展開する小売業者にも成長の余地があることを証明した」「ウォルマートは将来の成長に向けて効果的に、自社を位置付けし直すことができた」との見解を示す。

ウォール街もウォルマートのこうした点に注目しており、同社の株価は過去3カ月間で13.20%、過去5年間で29.29%上昇。株主には3カ月ごとに配当金が支払われている。

つまり、ウォルマートの業績改善によって、同社の株主たちには継続的な“賃上げ”が行われている。従業員たちにも同様に、一時金の支給ではなく待遇の改善がなされるべきだ。

一方、ウォルマートの広報担当の責任者は、次のように説明している。

「2004年に導入した現行の奨励給制度の下で、時給制で勤務する店舗従業員にはフルタイム、パートタイムを問わず(一度限りの支給ではなく)四半期ごとにボーナスの支給が行われている。四半期ごとの賞与の支払い額は昨年、総額6億2500万ドル以上に達している」

編集=木内涼子

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