5G通信の中核を担う企業が、ファーウェイだ。日本ではスマートフォン端末で知られる同社だが、売り上げの約50%を通信事業が占める(端末製造は約40%)。
5Gを基盤として、さらに彼らは世界中の企業を対象にしたエコシステムの構築に注力している。すでにフェイスブックやフィリップス、アウディなど271社とパートナー提携。47のプロジェクトを進行中だ。
企業のICT化を含めた法人向け事業の売り上げは、2018年度には100億ドル以上(この金額に端末事業・通信事業は含まない)。2016年度比で既に2倍近い成長を遂げており、今後2年間でもさらにこれを倍増させるという。
ファーウェイが次世代通信によって実現する世界とは。
「AIプラットフォームのプラットフォーム」をつくる
同社の著しい成長を支えているのが、研究開発への積極投資だ。毎年売上高の10%以上を投資し(2017年度は約138億米ドル)、EUが発表するR&D投資額ランキングでは世界6位にランクイン。世界各地に設置した「オープン・ラボ」を中心に、ハイテク研究を進めている。
エコシステムの中核をなすのは、「没入型クラウドVR」「デジタルスカイ」「コネクテッドファクトリー」「eヘルス」「遠隔運転」「広域位置情報システム」の6つだ。
とはいえ、ファーウェイが直接ドローンやVRヘッドセット、あるいは産業向けシステムを開発するのではない。法人向け事業グループのグローバルマーケティング担当プレジデントの邱恒(キュウ・コウ)は、「我々が提供するのは、AIプラットフォームのプラットフォームだ」と話す。
例えば、自動車製造を効率化するAIアプリケーションをつくるのは、自動車業界のパートナー企業だ。ファーウェイはアプリケーション作成のための仕組みや、IoTに適した軽量OSを提供する。
ハードウェア開発で蓄積してきた技術や世界から集めた高度な研究者を生かして、あらゆる環境に対応するアーキテクチャやストレージ、そして高精度なアルゴリズムを提供できるのが、彼らの競合優位性だ。
彼らは精度の高いプラットフォーム開発のために、各業界のトップ企業にヒアリングを重ねている。邱は「ファーウェイの目的は、あくまで異なる分野で共通するプラットフォームの開発だ。IoTなどで集まった具体的なデータに、私たちが勝手にタッチすることはないよ」と話す。