ミャンマー政府は昨年、西部ラカイン州でイスラム系少数民族ロヒンギャに対する攻撃を行った。その実態は、国連(UN)や非政府組織(NGO)が最近行った発表で詳細に報告されている。国連はこれを、「膨大な規模で行われた」人道に対する罪だと形容。先月発表した報告書では、ミャンマー軍が「ジェノサイド(集団虐殺)の意図」をもって殺人やレイプに及んだと非難し、同国軍司令官らを刑事訴追すべきだとしている。
一部のグローバル企業は、ロヒンギャへの残虐行為に対し断固とした姿勢を見せた。フェイスブックは、ミャンマー軍のミン・アウン・フライン最高司令官を含む軍幹部らのフェイスブックアカウントを停止した。同社の広報担当者はこの対応について「彼らがフェイスブックを利用し、同国での民族・宗教的緊張をあおった可能性があると当社は考えている」と述べた。
フェイスブックの場合、同社の製品であるサイトそのものがミャンマー軍司令官やその側近によって、ロヒンギャへの暴力をあおるために悪用されていた。しかし、ギャップなどの小売企業が迫られている決断は、より微妙な問題だ。アパレルのような低賃金かつ労働集約型の産業では、世界の大手企業は賃金が安くて政府の規制が緩い国に生産を外部委託するのが通例だ。
ファストファッションと激しい市場競争の時代である今、企業が成功を収める鍵は、生産コストの管理だ。中国での賃金が上がり続ける中、世界的ブランドや小売企業は、自社製品を安く生産できる国を探してきた。ベトナムやバングラデュ、最近ではミャンマーやエチオピアがその例だ。
こうした国での賃金は一般的に低く、労働者は長時間労働を強いられる。労働環境は危険なことが多く、従業員が団結権を保証されることはほとんどない。
注目すべきこうした慢性的な問題がある一方で、ミャンマーのような国ではこれまで、世界経済のグローバル化の恩恵を受けてきた。グローバル化した経済が生み出した数億の雇用は、世界の貧困の劇的な減少につながった。世界銀行によると1990年、東アジアで収入が1日1.9ドル(約210円)の国際貧困ライン未満で生きている人は62%だったが、現在その数は5%以下にまで減っている。