スマホで綺麗な写真が撮れる時代に、私が写真を撮る意味 #30UNDER30

写真家 吉田志穂


自分の中にある問題意識を作品づくりのコンセプトに
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──今の作風に変化してから、作品を作るときに吉田さんが大切にされていることは何なのでしょうか。

私は、自分の中にある問題意識や身近なテーマを作品づくりのコンセプトにおいています。

自分の中にある問題意識とは、誰でもスマートフォンで写真が綺麗に撮れる現代に、自分が写真を撮る意味とは何か。いろんな場所の風景写真が撮りつくされている中で、どうやったら見たことのない新しい写真を作れるか、といったようなことです。
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私はインターネットと共に生きてきた世代なので、自然とインターネットを利用した作品づくりをするようになりました。


「測量|山」2016

たとえばこの写真は、PCで画像検索をしたときの画面をフィルムカメラで撮影して、枠の部分に自分で撮った写真をはめ込んだもの。Google MAPなどで撮影地を探し、その場所の写真を画像検索やSNSで集めて、実際に現地に行って一発撮りで撮影します。現地に行って、その景色見えるホテルの部屋をわざわざ予約して撮影をすることもあります。

今、現実とインターネットのどちらがリアルなのかの境界線が曖昧になっているような気がしています。それを表現するために、デジタルっぽいイメージと現実にあるものを混ぜて、「見える世界」の境界を曖昧にする。ものを写すことや、見るということについて新しさを生み出し、問いを投げかける。そんなことをコンセプトにしています。

今興味があるテーマは「わからないもの」

──「自分の中にある問題意識や身近なテーマが作品づくりのコンセプト」とおっしゃいましたが、今吉田さんが興味のあるテーマは何なのでしょうか。

今興味があるのは、「わからないもの」ですね。

──「わからないもの」?

小さい頃からずっとインターネットがそばにあったので、わからないことがあったらすぐになんでも検索する癖がついていたんです。友達や先輩との会話の中でわからないことがあれば、会話の途中でもすぐに調べる。でもそれって、便利である反面、おもしろくないなと思うこともあって。

たとえば、誰かが「昔おじいちゃんとおばあちゃんが撮った写真の場所が知りたいんです」と言ったとしたら、今ってSNSを使うと案外特定できたりするじゃないですか。ネットを使うとわかってしまうことが大半で、あまりにも「謎」や「わからないもの」が少なすぎる。

──たしかに、そうかもしれません。

9月に「Yumiko Chiba Associates viewing room shinjuku」で個展をやらせてもらうんですが、そこでは「わからないもの」をコンセプトで作品づくりをして展示する予定です。

「わからないもの」を撮ると何がおもしろいかというと、世の中にまだ情報がないので、自分が「希少な情報源」として歴史に残る可能性があることですね。自分が撮影したものが、100年後、歴史的な資料になっているかもしれない。それって、すごく夢があるなと思います。
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文=明石悠佳 写真=小田駿一

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