広がる公務員の「民間視点」
2018年の受賞者について俯瞰して眺めてみると、その特徴として「民間」というキーワードが思い浮かぶ。民間とひと口に言っても、「民間視点」と呼ばれる売上(歳入)・コストに関わるケースがひとつ。もうひとつは、「官民連携」と呼ばれる、民間との連携や協業により、顕著な成果を上げるケースがある。
まず、「民間視点」の事例としては、有田川町(和歌山県)の中岡浩の取り組みが当てはまる。もともと別の部署に所属していたにもかかわらず、新規プロジェクトの提案書を作成して町長に直談判。計画が認められて自ら環境衛生課へ異動となり、県営多目的ダムに町が発電所を設置するという全国初の事例を7年越しで成し遂げた。
この発電所は年間約5000万円の売電収入があり、住民のエコ設備補助制度の原資として活用される。中岡は今回、特別協賛社賞の「LIFULL賞」とのW受賞を果たした。
同じく市の歳入を確保した寝屋川市(大阪府)の岡元譲史の成果も、注目に値する。滞納整理に精力的に取り組み、平成19年度から28年度にかけて、約35.8億円あった市税滞納繰越額を約19.5億円にまで減らした。
その経験から作成した「徴収事務マニュアル」は徴収職員の教本として活用され、全国各地で研修講師も務める。岡元も民間企業から高い評価を得て、特別協賛社賞として「ジチタイワークス賞」「VOTEFOR 政治山賞」を受賞し、まさかのトリプル受賞となった。
福井県庁の岩田早希代は、民間企業から期限付きの職員として転職し、地元愛あふれる県広報を行っている。元テレビ局のディレクターという経験を活かし、企画・取材・撮影さらには出演・編集すべてを行い、年間150本、3分間の質の高い動画制作を行う。「常に創意工夫を重ねて自ら情報発信する姿に心を揺さぶられました」と、「PR TIMES 賞」とのW受賞となった。
民間企業と連携したバナナ姫
民間企業と連携して経済効果を生んだケースも多く存在した。バナナの叩き売りの発祥地でもある北九州市(福岡県)の井上純子は、「バナナ姫ルナ」に扮したコスプレを活用。「バナナ姫ルナが案内する観光ツアー」や「バナナ姫ルナ焼きカレー」の販売など、民間企業とコラボしたユニークな取り組みを行う。大手メディアを含め100回以上メディアに取り上げられ、市のイメージアップにも貢献した。
川崎市の奥貫賢太郎は、NPOの一員として、市民と「市内のまちを歩くツアー」を立ち上げ好評を博した。税金に頼らず、今後はクラウドファンディングを使ってウェブサイトを立ち上げ、広告費などから持続可能な仕組みの構築を狙う。
驚くことに、課題解決の大半を予算ゼロで進める公務員も存在する。大和市(神奈川県)の山川歩は、「自転車保険付き自転車運転免許証の交付(小5~中3)」を日本で初めて開始、保険会社と交渉し実現させた。また、商店街の放置自転車対策のため民間企業と協定を結び、予算をかけず駐輪可能台数を増やした。予算をかけないことによってスピード感が生まれていることも注目すべきポイントだ。