自分たちの世代の選手は、物怖じしない
──もう1点、ミレニアル世代について伺わせてください。物欲などの欲望に薄く、友人とSNSなどで楽しみを共有しながら生きる、フワッとした世代という印象が世間的にはありますが。
たまにいわれることがあるんですが、いわゆる「ゆとり」みたいなことですよね?
──はい。日本国内だと、「ゆとり世代」がちょうど同じくらいの世代ですね。
試合前に緊張しないし、本番に強い。それが「ゆとりだから」といわれることが、たまにあるんですよ(笑)。
でも、そうなのかな、とも思います。30代から上の選手からは、試合前には逃げ出したくなる、不安しかない、という言葉はよく聞きます。でも自分たちの世代は、それはないんです。要は、フワッとしたままリングに上がっちゃう(笑)。
──平常心のまま世界と戦うんですね。
上の世代の方で、試合前は自分で喝を入れる、という話も聞いたことがありますが、自分たちの世代はその喝もないかもしれません。
自分がそういうタイプですし、同じ世代の他の選手の話を聞いていてもそうですね。もちろん、きちっとやる部分はやりますが。
──物怖じしない、ということでしょうか。先ほどの、過剰なストーリーは要らない、というお話ともつながっている気がします。今後、35歳までは現役を続けたいと日頃からおっしゃっていますが、これから見てみたい「景色」はありますか?
マニー・パッキャオが見ている「景色」は見てみたいなと思います。アジアから出ている選手で、アメリカのラズベガスでメインを張って、熱狂させている人は他にいませんから。その先は……まずはその「景色」までいかないと、その先は見えませんね(笑)。
──その「景色」に到達して、その「先」に踏み出す井上選手の姿を、楽しみにしています。
自分の試合が決まったら「井上の試合が決まったぞ!」と、常にみんなをワクワクさせる──そんな選手になりたいですね。
Forbes JAPANはアートからビジネス、 スポーツにサイエンスまで、次代を担う30歳未満の若者たちを表彰する「30 UNDER 30 JAPAN」を、8月22日からスタートしている。
「Entertainment & Sports」カテゴリーで選出された、プロボクサーの井上尚弥以外の受賞者のインタビューを特設サイトにて公開中。彼ら、彼女たちが歩んできた過去、現在、そして未来を語ってもらっている。
井上尚弥◎1993年神奈川県生まれ。大橋ボクシングジム所属。現WBAバンタム級王者、第17代WBO 世界スーパーフライ級王者、第33代 WBC世界ライトフライ級王者と日本人歴代最速の3階級制覇を果たした。