井上尚弥「チャンピオンになってからが本当のスタートだった」#30UNDER30


美しいボクシングを試合で魅せたい

──そうしたなかで、ボクシングで充実感を抱く瞬間はどんなときですか。
 
いまは練習がすごく充実しています。年々、試合に向けてのジム内でのチームワークが、いいものに変わっていっているんです。
 
──戦いに向けて、みんなで力を蓄え、環境を整えていくのが楽しい、と。
 
楽しいですね。ボクシングは試合が始まれば1対1、自分ひとりになりますが、その陰では、トレーナーをはじめ、いろんな人のサポートがあるんです。最高の練習をして、最高のコンディションをつくれなければリングに上がることはできません。

控室で試合を待っているときって、みんなの思いがすごく伝わってくるんですよ。「自分ひとりだけじゃない」ということは、世界戦をやっていくなかで強く感じます。
 
──次は「世代」について伺わせてください。ボクシングはこれまで熱血感あふれるイメージがありましたが、井上選手はすごく爽やかで、スタイリッシュな印象です。
 
たしかに一昔前は、「ガチンコ・ファイトクラブ」みたいに、ヤンキーが成り上がっていく、という感じでしたよね。そういうストーリーも大事だと思います。ただ、自分にとってのボクシングは、そこじゃないと思っているんです。
 
──どういうことでしょうか?
 
「試合で魅せる」、ということでしょうか。先日、トーナメントの抽選でロシアに行きました。出場する世界各国のトップ選手たちが集まっていて、直に接してきたんです。言葉は通じないですが、気持ちいいものを感じたんです。強い選手は「紳士」だな、それこそが「トップ」ということなんだな、と。

自分は、「ただの殴り合いじゃないぞ」というところを見せたいですね。ボクシング界のファイトスタイル自体も、昔とは変わってきているんです。

以前は殴って殴られてのドロドロした試合が多かったですが、いまはKO決着にしても「美しさ」という言葉も使われるくらいに変わってきています。そういうイメージにしていきたいんですよね。
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文=宮田文久 写真=小田 駿一

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