ソフトバンクはモビリティ分野でウーバーや滴滴出行(Didi Chuxing)、Grabらに出資を行なっている。ゲッタラウンドの共同創業者でCEOのSam Zaidは、フォーブスの取材に次のように述べた。
「マサ(孫正義)を説得するのはそれほど難しいことではなかった。ソフトバンクは移動の未来を熟知した企業だ。これまでと全く変わらないピッチを彼に対しても行なった。全ての車がシェアされる時代がやって来る──。マサが抱く未来のビジョンは我々と同じだった」
創業9年のゲッタラウンドは、自動車のオーナーが車庫に眠る車を見知らぬ他人にレンタルするサービスを提供する。オーナー側は楽なお小遣い稼ぎができ、借りる側はレンタカー会社に頼らずに、近所から手軽に車が借りられる。
車を貸し出したいオーナーはまず、「Getaround Connect」と呼ばれるデバイスを車内に設置し、会員がキー無しで車を利用できる環境を整える。初期費用は99ドルで、毎月のモニタリング費用の20ドルも必要だ。この分野では競合企業もいるが、この仕組みでゲッタラウンドは利便性の高いサービスを提供できているとZaidは話す。ライバル企業の「Turo」の場合は、対面でキーの受け渡しを行なう必要がある。
潤沢な資金を手にしたゲッタラウンドは今後、成長を加速させていく。Zaidは2009年に友人のElliot Kroo とJessica Scorpioらとともに同社を設立。2011年に正式にサービスを開始した。まずはサンフランシスコでオペレーションを開始した後、ボストンやロサンゼルス、シアトルやフィラデルフィアに進出。ゲッタラウンドはまだ黒字化を果たせておらず、売上は公開していない。
しかし、同社の成長ぶりはトヨタやウーバーらの関心もひいた。トヨタは2016年10月にゲッタラウンドと提携し、2017年4月のシリーズCラウンドで4500万ドルを出資した。
その1カ月後にはウーバーとの提携も始動。2018年4月にウーバーは「ウーバーレント」の立ち上げを宣言し、アプリから直接ゲッタラウンドが利用できるようにした。Zaidによると、同社は今後も様々な企業とのパートナーシップを拡大していく意向だという。
ただし、この分野では競争の激化も予想される。GMやBMWも独自のシェアサービスを立ち上げている。Zaidはカーシェアリング業界が今、大きな岐路にさしかかっていると考えた上で、ソフトバンクの支援を受け、自社のポートフォリオを拡大していきたい意向だ。
「ゲッタラウンドは今、最高のパートナーの支援を受け、ガソリンを満タンにして、フルスピードで走り出そうとしている」とZaidは話した。