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2016年、アナウンサーが人工透析患者に対して、「自業自得の人工透析患者なんて、全員実費負担にさせよ!」と、ブログに過激な文章を書いてネットで大炎上していた頃、人工透析の医療費について新しい試みが始まろうとしていた。

「共同でSIBの実証実験をしませんか」

神戸市役所を訪ねてきた日本財団や経済産業省の担当者が、市職員にそう問いかけた。SIBとは、行政課題の解決成果に応じて、投資した人々と事業者にリターンが支払われる仕組みだ

「神戸市で実現できれば、SIBが日本中に広まると確信していた」と、仕掛け人のひとり、SIIF代表理事の青柳光昌は言う。神戸市は医療産業都市を推進している。その神戸で、ヘルスケア領域でのSIBを提案したのだ。

市の高齢福祉部国保年金医療課で課長を務める野崎重和は、日頃から「医療費の問題は肌で感じていたので、直感的に使えると思った」と話す。着目したのが、糖尿病の医療費だ。初期は年5万円がかかり、人工透析になると年500万円に膨らむ。神戸市の国民健康保険の被保険者のうち、糖尿病性腎症で人工透析にかかる可能性のある約100人への6カ月間の保健指導を事業化した。

糖尿病に特化した保健指導をするDPPヘルスパートナーズと組んだ青柳らは、三井住友銀行の成長産業クラスター・業務開発グループに声をかけた。介護施設専門の不動産投資信託や、秋田県での農業法人の設立などに実績があり、新しい業務分野に取り組む部署である。

「こんなうまい話があるはずがないと思った」。同部署のグループ長、上遠野宏は、SIBについて聞いたとき、そう感じたという。だが、「調べるうちに、本当に“四方良しの仕組み”でした。神戸市の案件は組成できるし、やるべきと思った」。

同行は顧客ネットワークを活かし、市内の富裕層にも声をかけた。地元の人が健康になると、経済的リターンがある。誰もが幸せになれる仕組みに、地元に貢献したい富裕層は、喜んで出資した。

かくして、17年7月、神戸市には日本初となるSIBが導入された。この事業の実施は、その実績を評価する期間も入れて、3年間。医療費削減効果は、10年間で、最大1億7000万円を見込む。

この記事は「Forbes JAPAN 2018年08月号」に掲載されています。定期購読はこちら >>

文=山本隆太郎

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