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2017年は日本の社会的投資市場におけるひとつの転換点となった。社会的投資における新しい手法として注目を集める「ソーシャル・インパクト・ボンド」(SIB)が、日本で初めて、2つの自治体で相次いで組成されたからだ。

神戸市における糖尿病重症化予防、東京・八王子市における大腸がん検診の2つのテーマで、それぞれ2400万円、976万円。小規模ではあるが、社会的投資推進財団等の財団や個人投資家以外に、三井住友銀行やみずほ銀行等のメガバンクが資金を提供したことで、日本においても社会的投資の主流化の可能性を提示した。

10年に英国で発祥したこのスキームは、18年1月時点で20カ国以上において100件を超える組成が行われ、400億円を超える資金が投じられるなど、社会課題解決のための社会的投資の動きとして世界的に一つの潮流を形成している。

中央省庁においても、SIBの組成に対する助成金や委託事業は、15年から経産省が、17年から厚労省が開始しており、他にも総務省や法務省でも取り組みが始められるほか、17年に閣議決定された「未来投資戦略」でもSIBの促進が盛り込まれるなど、行政における関心は高まっている。

SIBの革新性は、事業の社会的成果(社会的リターン)に連動した支払い方式「成果連動型支払」と、民間事業と資金の導入という2つの点にある。例えば、八王子市における大腸がん検診事業でのSIBでは、大腸がんの早期発見による医療費の削減が期待通りに実現すれば、事業費用976万円に対して1684万円の医療費適正化効果が期待されている。

また、SIBの仕組みでは、その事業実施を通じてエビデンスを蓄積することで、民間のもつ、革新的で生産性の高い事業を行政サービスに採用するように働きかけ、社会的サービスのイノベーションを進展させることが期待されている。

こうしたSIBの仕組みを支えるのが、事業の社会的成果を評価する「社会的インパクト評価」である。従来から費用便益分析などの手法が、社会的サービスに対する評価として存在してきたが、特に90年代から、こうした手法を応用して、社会的事業による成果を評価する手法として発展し、SIB等の社会的投資を仕組みとして支えている。

日本においても、15年に内閣府で研究グループが組織されたのを皮切りに、官民連携で「社会的インパクト評価イニシアチブ」が16年に結成され、100を超えるメンバー組織の加盟により、手法の深化やケーススタディの蓄積等が取り組まれている。

15年にGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)がPRI(国連の責任投資原則)に署名してから、日本の社会的責任投資の資産残高は急増、17年には130兆円を超えた。また、19年には休眠預金を活用した年間400億円ともいわれる社会的基金が設置され、社会的投資への活用が議論されている。

国内でも上述のSIB導入の取り組みは教育や福祉、街づくりなどへの応用に取り組む自治体が20以上あるといわれ、こうした投資手法のイノベーションにより、日本発の新しい社会的投資の発信が期待されている。


伊藤 健◎慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科・特任講師、Asian Venture Philanthropy Network地域統括(東アジア)、特定非営利活動法人SROIネットワークジャパン代表理事。

文=伊藤健

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