コピー商品と言えば、高級ブランドを複製した「スーパーコピー」などがすぐに思い浮かぶが、実際にはあらゆる日常的な消費財や、企業向け製品なども含まれる。
偽医薬品や偽酒も問題である。それらは、人体に直接悪影響を及ぼすリスクを含むからだ。世界保健機関は、中間所得以下の国家で販売さているすべての医薬品の10%が偽物、もしくは基準以下の製品だと推定している。
それらいわゆるコピー商品市場は、今後も大きくなるだろうと予想されている。国際商標協会や国際商工会議所は、2022年までにコピー商品が奪う、もしくは代替する価値が2兆3000億ドルに達するとしている。そんななか、流出する企業の価値を守るテクノロジーとして注目を浴びるのが、人工知能(AI)やブロックチェーンだ。
IBMリサーチは、CAV(Crypto Anchor Verifier)と呼ばれるAI&ブロックチェーンベースの模造品検出プログラムを開発している。スマートフォンで動作し使い方も簡単だ。製品の写真を撮ると、アプリがデータベースにある画像と比較を実行して本物か偽物か判別してくれる。IBM側は同技術を、ダイヤモンド、現金、ワイン、医薬品とあらゆるものに応用できると説明している。
中国EC大手・アリババは20の国際的ブランドと連携。「ビッグデータ反模倣品連合」という組織を結成した。この組織の目標および構想は、製品リストや顧客の評価を人工知能で解析し、模造品や商品の欠陥を見つけるというものである。
また、北京のとあるベンチャー企業は「スマートディテクティブ」(Smart Detective)というアプリを開発。現在、かばんや財布の真贋判別に重点が置かれているが、今後は宝石まで鑑定できるよう改良していくとされている。
一方で、より精度の高い偽物をつくるため、模造品業者が人工知能などのテクノロジーを使いだす可能性も否定できない。本物の商品の特徴を学習した人工知能が、偽商品のつくり手に“インサイト”を提供するといったような使われ方である。
犯罪とテクノロジーは相性が良い。推測に過ぎないが、過去の例から考えればAIで偽商品を巧妙に生み出そうと心血を注いでいる主体は、すでに世界のどこかに存在していると考えた方が妥当だろう。
世界に流通するコピー商品は、人間の目で真贋を区別するには膨大すぎるし精密すぎる。つくるにしろ、見抜くにしろ、その役割は人工知能に取って代わられていくはずである。
連載 : AI通信「こんなとこにも人工知能」
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