飲酒に「認知症予防の効果」は本当か? 調査方法に問題点も

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だが、一方で研究チームは、「長期間の断酒」もまた、認知症リスクの上昇と関連していることを確認した。適度な飲酒をしていたグループと比べ、47%高くなっていたのだ。さらに、加齢とともに飲酒量が減っていた場合でも、認知症リスクは上昇していたという。

この研究には、同様のその他の研究のほぼ全てと同じように、「断酒の理由が明確にされていない」とうい問題がある。多くの人が断酒する理由は、健康に対する意識の高さではない。すでに健康に何らかの問題を抱えていることだ。

研究チームは断酒した人たちが持つその他の特徴についても調査を行った。その結果、断酒した人には「肥満、運動不足、教育水準が低い、心臓病リスクが高い」といった傾向があることが分かった。

これらは全て、認知症の発症との強い関連性が指摘されている特徴だ。つまり、この研究結果における断酒と認知症リスクの高さの関連性はその大半が、こうした特徴によって説明がつくということになる。

同時にこの結果は、適度の飲酒はこれまで考えられてきたほど、認知症の予防につながらない可能性があることを示している。忘れてはならないのは、飲酒がその他の多くの健康上の問題に関連しているということだ。“適度”の飲酒をしている人は、効果とリスクについて考え直してみる必要があるかもしれない。

飲酒の習慣を持たない人が、健康効果を期待してこれから飲み始めるというなら、それはやめておくべきだろう。効果が本当にリスクを上回るのかどうか、現時点では判断できないからだ。

新たな研究結果をまとめた論文の著者らは、「神経精神疾患や肝硬変、がんとの関連性が明らかになっているアルコールの摂取を、飲酒の習慣がない人に勧めるべきではない」と結論付けている。

編集=木内涼子

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