デビュー作となる『アーキテクチャの生態系: 情報環境はいかに設計されてきたか』(2008年、NTT出版)では、ニコニコ動画をはじめとした当時の先端的なネットカルチャーやウェブサービスを詳細に分析し、日本の情報社会研究の金字塔と評しても過言ではない『ised 情報社会の倫理と設計』(2010年、河出書房新社)の編集にも携わるなど、この連載「SNSマーケティングを社会学的に考える」のテーマに相応しい実績をお持ちです。
そんな濱野さんから、元々交遊があったこともあり、僕の『シェアしたがる心理~SNSの情報環境を読み解く7つの視点~』(2017年、宣伝会議)についてのコメントを頂きました。その啓発的な内容をご紹介しつつ、いま育児に励まれている濱野さんが見出したインスタグラムの意義についてフォーカスしながら議論を進めていきましょう。
インスタで「#タグる」ことによってリアリティを手繰り寄せる
濱野さんは、僕の著書で展開した議論について、以下のように評してくれました。なおコメント頂いている、「ググるから「#タグる」へ」というテーマは本連載の第一回でも扱っています。
濱野:『シェアしたがる心理~SNSの情報環境を読み解く7つの視点~』(宣伝会議、2017年10月)は、特に2010年代、中でもここ数年のSNS―特にインスタグラムや動画配信共有サービスといったビジュアル系SNS―における情報環境とユーザー心理を明らかにした書籍です。私(濱野)はかつて2008年に『アーキテクチャの生態系』という書籍を出しましたが、この時はまだスマートフォンはほとんど普及していませんでした。その意味で本書は、その後の世界を整理した書籍になっており、もちろんマーケティングにも役立つ内容ですが、情報社会論・メディア論としても十分に読み応えのある議論が展開されています。
さて、特にインスタグラムはいま日本でもユーザーが急増していますが、ツイッターやフェイスブックを主に使ってきた層には、その魅力がさっぱり分からないという読者もいまだに多いのではないかと思います。実は私もかつてはその1人でした。その答えは本書の中で様々な角度から分析されているのですが、その中でも最も印象的な切り口となるキーフレーズが “「ググる」から「#タグる」へ” というものでしょう。