米国司法協会も警告
全米の弁護士が加盟する米国司法協会は、実は、ホームページで訴訟ファンドへの警告を発している。ファンドによって金だけが目当ての不当訴訟が生まれ、それが社会コストを引き上げ、法曹界もこの金銭欲に引きずられて倫理観を失うと危惧しているのだ。
懸念の一例をあげると、法律事務所同士が魅力ある集団訴訟を奪い合うときに、被害者に一定の見舞い金を先渡しすることで仕事を獲得するという非倫理的な現象さえ起きているという。これは本来の司法の仕組みを歪めるだけでなく、弁護士が能力で評価される以前に、金を集められるかで評価されるという点が問題だ。
さらに、弁護士には、クライアントの守秘を完全に守る義務がある。しかし、この義務の制約をうまく潜り抜けるような契約文言を顧客と交わすことにより、具体的な秘密の裁判資料をファンドに提供することになる。ファンドも、金を出すか出さないかの判断はその資料に左右されるからだ。
怖いのは、訴訟ファンドのバックに誰がいるかということだ。仮の話、グーグルを訴える訴訟があったとして、そのファンドの後ろにアップルやフェイスブックがいたらどうするのだろう? これは企業秘密を開示させるために、舞台裏でファンドが原告をけしかけるという状況を生む。
「正義の救済」は、勝つか負けるか、大儲けか元本消失かのルーレットゲームに置き換えられつつある。今月のウォール・ストリート・ジャーナルは、弁護士過剰時代を指摘し、このようなファンドに勤めるほうが弁護士として高い報酬を得られるようにさえなってきたと指摘している。
このルーレットゲームの魅力に世の個人投資家が引きつけられていったとき、このファンドはかつてのサブプライムローンのように膨れ上がり、とてつもない大きなパワーで金融と司法を揺り動かしていきそうだ。
連載 : ラスベガス発 U.S.A.スプリット通信
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