その経験から、ロケットをまるごと3Dプリンターで製造するというアイデアを生み出した。しかし、2人はまだ20代のエンジニアで人脈も資金もなかった。
そこで、彼らはビリオネアのマーク・キューバンに救いの手を求めた。「私はキューバンが住むテキサス州の出身なので、メールを送ってみた。“宇宙はセクシーだ - 3Dプリンターを使ったロケット製造”というタイトルのメールを送った」とEllisは話す。
シードラウンドで50万ドルの資金調達を目指しており、キューバンには10万ドルを出資してもらいたいとメールに書いたところ、キューバンから全額出資を約束する返事が送られてきたという。
こうして宇宙スタートアップ「Relativity Space」は誕生した。同社が目指すのは、ロケットを丸ごと3Dプリンターで製造し、新世代の宇宙スタートアップのリーダーになることだ。
衛星産業はこの数年で非常に活気づいている。調査会社「Bryce Space & Technology」によると、業界全体の売上高は昨年2700億ドルに達し、現在も急拡大を続けているという。「しかし、高額な打ち上げコストが参入障壁となっている」とEllisは話す。
航空宇宙会社やロケット会社の多くは、3Dプリンターで部品を製造している。Relativity Spaceがこれらの企業と異なるのは、ロケット全体を3Dプリンターで製造する点だ。このため、同社は巨大な3Dプリンターを独自開発した。
「非常に野心的な取組みだが、ゼロからロケットをデザインできる点が有利だ。多くの企業は、部品や組み立て方法の再設計に取り組んでいるが、その方が困難な場合も多い」と3Dプリンター業界の調査を手掛ける「Wohlers Associates」のTerry Wohlers社長は話す。
10社以上のスタートアップが新規参入するなど、業界内の競争は激しさを増している。このうち数社は、1〜2年後に衛星の打ち上げを計画している。Relativity Spaceが自社ロケットの打ち上げに成功しても、同社にはライバルとの熾烈な競争が待っている。