「決勝トーナメントに行けたからいい」「ルールは破っていないから問題はない」という賛成派。それに対し、「フェアプレーじゃない」「最後まで戦い抜かなければならない」などの否定派の意見。
私は翌朝のニュースでこの試合後半の映像を見ながら、「決勝に行く目的をルールを破らずに果たすならば問題ない。でも、ここまで露骨に戦わないそぶりを見せると批判を呼ぶのに、それでもやるのはすごい」と思いました。また、職場では、「戦略と美学の両立は可能か?」という議論にまで発展しました。
美しく勝つ、とは?
ポーランド戦しかり、勝負においては、勝ち負けだけでなく「美しく勝つ」ということに重きを置く人も少なくありません。では果たして、美しく勝つとはどういうことなのでしょうか?
ビジネスの現場において、法規則は破らず目的を達成したけれども、批判されるケースと応援されるケースを考えてみました。ひとつは、サントリーの炎上したPR動画の件で、もうひとつは、赤ちゃん本舗のパッケージ変更の件です。
サントリーの「絶頂うまい出張」が問題になったのは昨年の夏のこと。当時新発売した「頂」のPRとして、出張先で現地の女性とご当地グルメを食べる動画を公開すると、「コックゥ~ん!しちゃった」などのセリフが性差別的だと批判され、間もなく炎上。サントリーはわずか1日で非公開とし、謝罪しました。
新商品が話題になることを狙っていたとすれば、結果的に炎上というマイナスな形ではあったにせよ、注目を集めるという点では成功です。しかし、非公開にするほど不快に感じた人が多いと考えると、美しいとは言い難いです。
一方の赤ちゃん本舗は、自社ブランドのおしりふきシートに「akachan honpoは全国のお母さんを応援します」と表記していました。それをある人がおかしいと考え、オンライン署名サイトChange.orgで、その表記変更を求めるキャンペーン「オムツ替えはママだけ?」を開始。するとその1か月後、赤ちゃん本舗は表記の削除とパッケージ変更を発表。その対応が非常に良いと話題になりました。
サッカー日本代表も、サントリーも、赤ちゃん本舗も、ルール(法規制)は違反していません。サッカーは決勝リーグ進出、サントリーは話題づくり、赤ちゃん本舗は乳幼児マーケットにおけるシェア拡大。達成すべき目的を達成できれば、戦略的には悪くないと言えるでしょう。
しかし、批判されることもある。すると、戦略においては「否」を引き起こす要素へのケアがいかに大事かということが見えてきます。