値引きされる商品の幅に対する買い物客の不満を解消することができておらず、そのためプライムデーに対する期待感は、限定的なものにとどまっていると考えられる。
ただ、今年はその状況にも変化があるかもしれない。エンターテインメント性を重視し、販売チャネルをオンラインに限定しない中国のネット通販大手アリババの「独身の日」(11月11日)のイベントと同じような要素を取り入れようとしている様子がうかがえるためだ。これは、プライムデーのアリババ化と言っていいかもしれない。
エンターテインメント性を重視
アマゾンは今年初めて、世界の主要都市に巨大なスマイルボックスを届け、サプライズ・イベントを開催すると発表。「ニューヨークとロサンゼルス、ロンドン、東京、ミラノの顧客たちは、…忘れられないイベントを楽しんでくれるだろう」と述べている。
買い物客を巻き込むエンターテインメントは、アリババが独身の日に採用しているアイデアだ。イベントの開始を祝うにぎやかな催しのテレビ放送を行うなどしている。
オンラインとオフライン
今年のプライムデーに提供される「リアルな世界」での体験は、スマイルボックスだけではない。アマゾンはプライムメンバーを対象に、高級スーパーのホールフーズ・マーケットで販売している数百品目の価格を10%引きにするほか、一部の人気商品については、それ以上のディスカウントを行う。
オンラインとオフラインの小売り双方に同時に力を入れる販売モデルも、アリババがその「ニューリテール(新しい小売り)」戦略に取り入れているものだ。昨年の独身の日には、多数のブランドにポップアップのスマートストアを開設してもらったほか、小規模店舗が参加するその他の取り組みも実施した。
「特別」を提供
アマゾンはそのほか、ブランドの規模を問わず各社に「新商品、新コンテンツ、限定品」を出品してもらうと約束している。これもまた、アリババが独身の日に「ブランド」を前面に打ち出したことに同調したものだ。さらに、これはアマゾンが自社ブランドの販売に力を入れることに対してのバランスを取る方策でもある。アマゾンは昨年のプライムデーには、立ち上げから間もないアパレルや食料・雑貨の自社プライベートブランドの宣伝にかなりの力を注いでいた。
今年の売上高は?
アマゾンはプライムデーの売上高を公表していない。だが、業界誌インターネットリテイラーの調査によれば、昨年の世界全体での同日の売上高は、およそ24億ドル(約2690億円)に達したと推計される。
この金額をベースとして(他社の前年比での売上高と同水準の伸びを実現すると)考えれば、今年のプライムデーの売上高は世界全体で、前年比40%増の34億ドル程度に達すると予想することができる。
ただし、仮に今年のプライムデーの売上高が30億ドルを超えたとしても、アリババの昨年の独身の日の売上高が約250億ドルだったことからみれば、ごくわずかな金額だ。中国のもう一つの電子商取大手、JD.com(京東商城)が今年6月に18日間にわたって行ったショッピングイベント「京東618」でも、同社は約240億ドルを売り上げている(1日当たりの売上高は、平均“わずか”14億ドルだが)。
3社の売上高の比較から分かるのは、アマゾンはプラムデーの売上高をまだまだ増やせるはずだということだ。