欧州議会は7月5日、著作権新指令案(Copyright Directive)についての投票を行った。投票結果は賛成278、反対318、棄権31で指令案は採択されず、9月の再投票に持ち越した。
問題となったのは指令案の11条と13条だった。11条はサイト上にリンクを貼って外部サイトの内容を表示する場合、権利元へのライセンス料の支払いを求めていた。また、13条はユーザーの投稿を表示するサイトの運営者に、全ての投稿をデータベースと照合し、著作権侵害が起きていないかをチェックすることを求めていた。さらに、データベースの利用料の支払いも義務づけようとしていた。
この法案が実施された場合、コラージュや二次創作などのネタ投稿が一切できなくなり、「ネットの死を招く」と恐れられていた。法案が否決されたことで、反対していた人々からは安堵の声があがっている。
反対派であるドイツの海賊党選出の欧州議会議員ジュリア・レダは、ツイッターで「大成功だ。みんなの抵抗の努力が実を結んだ」と述べた。
デジタルコンテンツの自由を守る団体「Open Rights Group」のジム・キロックも声明で次のように述べた。「欧州議会は75万人にも及ぶ人々の反発の声に耳を傾け、ロボットによる検閲が適切な手段ではないとの決定を下した。しかし、欧州に暮らす全ての人々は、9月の再審議の動向を注意深く見守る必要がある」
また、Wikipediaの創業者であるジミー・ウェールズもツイッターで「ついにやった。みんなのおかげだ。ありがとう」と発言した。
しかし、クリエイティブ業界からは反発の声もあがっている。法案の成立を期待していた著作権管理団体「The Society of Audiovisual Authors (SAA)」は「数カ月に及ぶ我々の努力が無駄になった」と不満を述べた。
SAAのエグゼクティブ・ディレクターCécile Despringreは「欧州議会のメンバーの過半数が、反対派からの圧力に屈したことは非常に残念だ。これは欧州の著作権者たちに不利益をもたらす決定だ」と述べた。
一方、英国レコード産業協会(BPI)は、今後も議会へのロビー活動を続けていくと宣言した。BPIはツイートで「我々は欧州議会メンバーらに対する働きかけを継続する。この法案は欧州のクリエイターのみならず、世界のインターネットやテクノロジー産業に大きなメリットをもたらすものだ」と述べた。
しかし、彼らが何を言おうと今回の11条や13条が、成立する見込みはなくなった。少なくとも、現状の内容で施行されることはないだろう。欧州のインターネットの自由は、ぎりぎりのところで危機を脱したのだ。