人間が囲碁AIに負けても焦る必要のない理由とは?

Sofiaworld / Shutterstock.com

前回は、失敗しないAIプロダクト作りをするためのチェックポイントとして次の5つを紹介しました。

(1)その製品で解決可能な「総負荷量」が世の中でごく小さいものではないか

(2)その製品で答えようとする問題は「同質性」が低く、あまりにケースバイケースなものではないか

(3)その製品がごくまれにでも誤った結果を示した場合に、どのようなリスクを誰が負うかという「責任性」の大きいものではないか

(4)その製品が最適解として提示してくる選択肢のうち「有効性」が高いものは、考え得る全ての組み合わせの中でごくまれなものではないか

(5)その製品の働きは人間が行なうこと自体が意味を持つような「感情価値」の大きいものではないか

今回からはこれらを1つ1つ詳しく紹介したいと思いますが、まずこの1つめに挙げた「総負荷量」について考えてみましょう。

人工知能技術とはすなわち、人間の認知的な活動をコンピューターに代替させるということです。どのような活動を代替させることができるか、というのがそのままAIプロダクトの価値になるわけですが、その際に注意しなければいけないのは、

 ・世界中で何人の人が
 ・年間何時間ぐらい
 ・どれくらいのストレスを感じる活動か

という3点です。これらをすべて掛け算した結果が、世界におけるその活動の「総負荷量」と私が呼ぶものになります。極端な話、世界中でわずか数名の人間が、年に一度少し頭を悩ませるようなことをAIにやらせることが可能だとしても、おそらくAIを用意する手間の方がたいへんです。しかし、何億人もの人が、毎日何時間も頭を悩ませることを代替できるのであれば、それは大きな価値を生むことになります。
次ページ > 囲碁AIはビジネスにどう応用できるか?

文=西内啓

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事