私は彼女にこう尋ねた。「今回決断を下すにあたり、あなたにとって重要な価値観は何か?」。彼女はしばらく考え込んだ。この質問により、彼女が自分の感情を抑え、今の状況を違う視点から見ることを促されたのが分かった。アンナは次のことを共有してくれた。
彼はアンナからフィードバックを受けた際、仕事を失うことを恐れ、涙を流した。彼は離婚後、娘の近くで暮らそうと、この会社での仕事のために引っ越してきた。彼は、娘との関係作りが大切なのだ、と言った。
アンナはこの時、ただの従業員としてではなく、ひとりの人間としての彼とのつながりを感じた。彼の話と、彼の中に見えた人間性が、自分が大切にしている優しさと人の尊厳という価値観と結びついた。この価値観を探求することで彼女は、彼に対してこれまで以上により良い指導役となることにより、彼の成功を支援したいと感じていることに気付いた。
今後3か月間で状況がどう変わり、彼が最終的に組織の期待に応えられるかどうかは、まだわからない。アンナが自分の価値観を認識することで確実に変化したのは、彼に対する認識だ。彼を責めるのではなく、相手のことを知りたいという気持ちになり、彼の自己認識の育成を支援しようと決意した。またこの会話により、リーダーとして、また人間としての自分らしさを確認できた。
アンナは、決断を下す前に立ち止まり自分の価値観を確認することで、自分が理想とするリーダー像に近づけるということを学んだ。決断に当たり、自分が影響を与える人々の人間性を目にできるのは、いわば自分への贈り物だ。自分自身を変え、相手との話し方、互いへの態度、そして職場全体に変化をもたらす。全てが良い方向に向けて変わるのだ。