これは米国のあり方や、米国人としての信条を問う闘いだ。米国人であることは何たるかについての根本的な意見の相違であり、米国人としてのアイデンティティーを人間としてのアイデンティティーに優先するかどうかの問題でもある。
移民問題は複雑かつ流動的で、感情にも満ちているため、簡単には答えを出せない問題だ。特に今回の政策については、人々の立場はさまざまだろう。私が提案したいのは、これを私たちの意思決定方法における価値観を見直す機会だと捉えることだ。
リーダーとしての重要な役割のひとつは、決断を下すことだ。ヒエラルキーの上層にいるほど、決定は微妙なものになり、その影響力は大きくなる。最終責任は自分の肩にかかっている。
次のことを自問してほしい。自分は決断を下す際、立ち止まって自分の価値観を見直しているだろうか? 自分のステークホルダーの価値観をどのように考慮しているだろう? リーダーとして人に影響を与えるにあたって重要な価値観とは? 職場で自分の人間性を保つことや、人間の尊厳を守ることは、自分にとってどれだけ重要だろうか?
一例として、私のエグゼクティブコーチング業のクライアントであるアンナとの最近の会話を紹介しよう。
「もう彼を解雇したい」。彼女は声を大にして言った。その口調には疲れと憤りがにじんでいた。半年前に新たなリーダーとして雇った男性に対する信用が失われつつあったのだ。
彼は仕事の出来は素晴らしかったものの、チームに対して敬意を払わず、権力を振りかざすなど、アンナが築いてきた組織文化に反する態度を取っていた。チームからは多くの不満が寄せられた。人事部からも、彼の問題行動を記録し、解雇のための証拠固めを始めるよう圧力を受けている。本人にフィードバックをしても、自己弁護するばかりだった。
彼女は重要な決断を迫られている。彼を解雇すべきか、それとも態度を改めるためにさらに3か月の猶予を与えるべきか。彼女はまた、さらに重要な問いに直面しているとも言える。自分はいったいどのようなリーダーなのか?