ツイッターを使い始めた2009年頃。一番感慨を覚えたのは、みんなのつぶやきではなく、ハッシュタグの機能でした。あるひとつのテーマについてフォローしている人以外のみんなの意見が読める楽しさに、「これぞソーシャルネットワークだ!」と興奮したものです。僕もイベントの実況をハッシュタグ付きでガンガンしてみたりして、多くのユーザーとのやりとりを楽しんでいました。
インスタグラムが流行り始めたとき、ここでもハッシュタグが大活躍でした。女性と食事に行くお店を探すときは、喜んでもらえるようなオシャレなお店を見つけるために、「#お洒落なお店」「#雰囲気最高」などのハッシュタグでざっと写真を見てお店を選ぶということを日々やっていました。
このように、誰もがハッシュタグを使って情報を広げたり集めたりするようになっている。いまやユーザー数の拡大とシェアされる情報の質の高まりで、SNSは「人と繋がりあう場」にとどまらない「情報と出会う場」の主役となっているのです。
僕は、若年層を中心としたSNS検索のありかたを指して「タグる(=ハッシュタグ+手繰る)」というコンセプトを提唱しています。情報との出会いは「ググる」から「タグる」へ。17年12月のアップデートによってインスタグラムでもハッシュタグフォローが可能になったことから、さらにこの情報拡散のムーブメントは広がっていくと見られます。
今回は「ハッシュタグ進化論」と銘打ったタイトル通り、ハッシュタグの進化のかたちを紹介します。
まずは(1)、「ハッシュタグを起点としたムーブメント」。日本でも流行った「#icebucketchallenge」はその好例で、著名人から一般人まで、数多くの人が参加。アメリカでは「#BlackLivesMatter」によって、人種の差別への異議申し立てが組織化され、ミュージシャンもこのハッシュタグに呼応するように楽曲を発表してファンを巻き込んでいくなど、ソーシャルな運動の核となるタグラインとして機能しました。
そう、ハッシュタグはいわばSNS時代のメッセージタグライン。そして、分散化メディア時代のユーザーの新しい参加の手段です。自身の体験や思いをハッシュタグにまとわせたメッセージ込みでシェアし、広げられる。ここまでで挙げたのはどれもタグることによって、ソーシャルな課題に対するみんなの声をまとめあげていく動きで、「ハッシュタグアクティビティ」とも呼ばれています。
この文脈でいえば、17年もっともタグられたハッシュタグが「#MeToo」であることに異論はないでしょう。このムーブメントの発端となった記事はピュリツァー賞を受賞しています。社会的な異議申し立て、そのための連帯の印が日本も含めて世界中で拡散されていきました。#MeTooがあったからこそ、背中を押されるように自分の経験をシェアした人も多かったはずです。