さらに、#MeTooは発展して、#WithYouというハッシュタグへと進化しました。「告発」から「被害者に寄り添うケア」へのメッセージの拡張が起きました。ハッシュタグによって、このソーシャルアクションのステージが変化していることが分かりますし、ボトムアップに生成・流通されるがゆえの「いきもの感」があらわれていて興味深く思います。
「タグる」には、他のバリエーションもあります。最も日常的な使い方が「2情報を探す」です。パンケーキを食べたくなったとき、検索サイトに「パンケーキ」と入れて探さずに、タグることで目当ての情報を探す人が増えています。インスタグラムで「#パンケーキ」と入れると、約280万件の投稿が見つかります。まずは「人気投稿」の欄をチェックしたり、ビジュアルの印象で選んだり。そうして目当ての情報(食べるべきパンケーキ)を探します。
そこから派生して「3ジャンルで繋がる」というものもあります。インスタグラムでは「#○○好きな人と繋がりたい」というハッシュタグが人気です。例えば「#写真好きな人と繋がりたい」は投稿数約1600万件。関心のコミュニティをつかまえることが、これからのSNSマーケティングの重要テーマです。
いまやタグることの実践は、モノやコトに関する意味付けや分類にとどまらず、その人自身の考えやアイデアを共鳴させていく繋がり/連帯の符牒として機能しています。ユーザーがよく使うハッシュタグを観察しうまく活用すること(2)、それによってコミュニティを築いていくこと(3)は、ともに重要です。
しかし、ここで注目したいのは、ハッシュタグアクティビティ(1)の事例から観察されるような、距離が縮まることによる「関係性の発展」。そこに隔たった距離感を「繋がり」に変える、ユーザーをエンパワーメントすることがビジネスを含めた広義の課題解決に繋がる時代が訪れました。
マーケティングからソーシャルアクションまで、「#タグる」がユーザー自身の参加性を前面に出した巻き込みのかたちとして、今後もっと大きなポテンシャルを発揮するでしょう。所属する企業の施策や、趣味などのコミュニティなど、さまざまな場所で多くの人々を巻き込むようなハッシュタグを試すことが、未来の財産になるかもしれません。ハッシュタグの進化の波に乗るなら、きっと今です。
電通Bチーム(旧電通総研Bチーム)◎A面(本業)以外に、個人的なB面を持った社員が集まり、いままでと違うやり方planBを提案する「オルタナティブアプローチ」チーム。閉塞感を打破する方法をつくっています。現在50以上のプロジェクトを支援中。平均年齢約35歳。
天野彬◎電通Bチーム「SNS」担当。電通のソリューション開発部門にて、新しいメディアやユーザーインサイトの動向をリサーチ。近著に『シェアしたがる心理』(宣伝会議)。