競売にかけられる宝飾品はダイヤモンドから真珠、サファイアなどさまざまで、欧州の君主・王家が数世紀にわたり受け継いできた品々もある。その中でも興味深いのは、フランスで1793年に断首の刑に処されたマリー・アントワネット王妃が所有していた数点で、一般公開されるのは200年ぶりだ。
1774年、18歳にして王妃となったアントワネットは、きらびやかな生活を送ったことで有名だった。自らをダイヤモンド、真珠、ティアラで飾り立て、特注のガウンを数百着持っていた。夫のルイ16世と共にぜいたくな生活を送ったことが、フランス革命の主な要因と言われている。革命が近づいていた1792年、アントワネットは宝石の数々をトランクに詰めブリュッセルに送り、トランクはそこからウィーンに住むおいであるオーストリア皇帝に送られた。
しかし、アントワネットとルイ16世、その子どもたちは結局、オーストリアに逃亡できなかった。王家は1792年に幽閉され、アントワネットとルイ16世は翌年、革命裁判にて反逆罪で有罪判決を受けて斬首された。息子は獄死したが、娘は数年後に解放され、オーストリアに逃亡。彼女はそこで母の残した宝石を受け取り、それ以降宝石は王室の血を継ぐものに代々受け継がれてきた。
マリー・アントワネットの宝飾品に加え、仏国王シャルル10世、オーストリア大公、パルマ公が所有していたものも多数出品される。ブルボン・パルマ家は、ブルボン家からハプスブルク家までを含む君主の血筋で、フランス・スペイン・オーストリアなどの王族を輩出している。そのため、オークションに出される品の多くは非常にぜいたくな宝飾品だ。
オークションに出品されるのは、200年の歴史の中で特に重要な王家・貴族を取り巻いてきた100点以上。中でも、マリー・アントワネットの天然真珠とダイヤモンドのペンダントは100万~200万ドル(約1億1000万~2億2000万円)の値が付くと予想されている。また、天然真珠の水滴型イヤリングのセット(推定売却価格は最大5万ドル/約550万円)や331個の天然真珠をつなげて重ねたネックレス(同30万ドル/約3300万円)などもある。
ハプスブルク家など欧州の関連王室ゆかりの品には、マリー・アントワネットが所有していた5つのひとつ玉ダイヤを含む95個のダイヤモンドを使った宝飾品セットがある。また、6.89カラットのビルマ産ルビーをあしらったブローチが20万~30万ドル(約2200万~3300万円)での落札が予想されているほか、豪華なオレンジピンクのダイヤ(2.44カラット)を付けたダイヤモンドの指輪セットもある。出品物のリストは延々と続き、歴代オークションの中でも特に魅力的な品ぞろえだ。
出品物は伊ミラノで6月21日、独ミュンヘンで9月18日、独ケルンで9月21日から一般公開される。