この「リディバイダー」という地球の運命を描いたSF作品も、もしかしたら「ブレードランナー」のような、後年まで語り継がれる作品になる可能性を秘めているかもしれない。なぜなら、とにかく公開されてからの評判が芳しくないのだ。
物語は近未来、資源の枯渇に瀕した人類は、もうひとつの地球(エコーワールド)を複製して、そこから新たなエネルギーを得ようとする。とにかく壮大で、ある意味では大法螺的な設定に対して、批評サイトでは反発が多いようである。
まさか3Dプリンターで地球を複製したわけではないと思うが、劇中では、その方法について詳しい説明はない。ディテールにこだわる人ならば、そのあたりに違和感は持つとは思うが、宇宙空間で大活劇を繰り広げる「スター・ウォーズ」シリーズに比べれば、まだかわいいもののような気がする。
比較的シンプルなストーリーや突っ込みどころのある登場人物にも厳しい意見が散見される。なにぶん、アナザーワールドを扱ったものなので、よくよく考えれば辻褄の合わない部分も目立ってしまう。わからないでもないのだが、へそ曲がりのすれっからしの観客としては、何故か細かいところはスルーして、最後まで面白く観てしまった。
まあ、未来に何が起こるかは、皆目見当もつかないので、本当にこれに近いことを、将来われらが人類は考え、実現しているかもしれない。まず、そのような寛大な心を持ってこの作品を観ると、なかなか興味深いものも感じる。
物語の展開としては、この設定された状況に対して、まず異常事態が発生するわけなのだが、ここでは複製される際には、生物はその範疇ではないということであったのに、いざもうひとつの地球に足を踏み入れると、そこには人間たちの死体が転がっている。ここから危機的な状況が出来する。
巨大なタワーを通して、もうひとつの地球からエネルギーを得るはずったのに、不測の事態が起こり、コピーされることのないはずだった人間たちが現れ、そのうえ重力の異常で地球上の船や地下鉄など巨大な鉄の塊が、もうひとつの地球に吸い寄せられていく。
このあたりの映像は、けっして予算の多い作品ではないのになかなかの観応えがあり、さすが「YouTube」で話題を集めた気鋭の映像クリエイターでもある、ティム・スミット監督の映像感覚と技巧が凝縮されているように思える。悪評のなか、これだけは素晴らしいと高評価を受けているドローンとのバトルシーンも、かなりの迫力がある。
もうひとつの地球を複製し、そこからエネルギーを得る、という気宇壮大なプロジェクトの成り行きは、作品を観てのお楽しみだが、制御できないものを見切り発車して、とんでもない事態を起こしてしまうあたりは、自分たちの周囲に目を転じて、考えさせられるものもあった。