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日本の不動産最前線

Steve Rosset / shutterstock

あまり知られていないが、マンションの「管理状態」は、売買価格にさほど反映されていない。

東京都内のとある場所には築40年、総戸数約200戸で同グレードのマンションが2棟並んで建っている。西側のマンションAはしっかり管理され修繕積立金も潤沢、経年による陳腐化はみられるものの建物のコンディションは良好、まだいくらでも長持ちしそうだ。

一方で東側のマンションBは非常にまずい状況。修繕積立金は全く足りず、必要な大規模修繕も長らくできていない。ぱっと見はよくわからないが、建物をよく見るとあちこちが老朽化し、もうそれほど長持ちしそうにない。住民の高齢化や賃貸化も進み、修繕積立金の値上げも難しく、やがて廃墟化する未来が透けて見える。

ところがこの両者は現在、同価格水準で売買されている。

会社で言えば倒産寸前

東京都港区、白金高輪駅直結の「白金タワー」は2005年竣工。住宅581戸、店舗22区画、総戸数603戸からなる3棟地上42階、地下3階建ての複合タワーマンション。竣工当初の管理組合は再開発地権者がそのまま理事や監事を務めていた。

しかし第5期の末に、再開発当初から地権者と強く関わってきた管理会社(当時、長谷工コミュニティ)のフロントマネジャーによる現金横領が発覚、役員が退陣し理事、監事が総入れ替えとなった。

第6期から理事に就任し、第7期から理事長を務めている星野芳昭氏は、長年、企業の統治改革や幹部研修、自治体の行政改革や公共調達等のコンサルティング活動を実践してきたが、それまでは管理組合には全く関心を持たなかった。しかし、総会に参加して管理組合の実態を知り「これは放っておけない。会社で言えば倒産寸前、再建を舵取りしないといけない」と週末に管理組合の改革に時間を費やすことを決意した。

まずは共用部のカーペット張り替え工事の見直しに着手。当時の管理会社提示の見積もりが約3600万円だったところ競争入札にして1000万円以上のコストダウンを実現。調達ガイドラインも制定した。

同時に業務の見直しに着手。新たな業務仕様と独自の審査方式に基づき、指名競争型企画コンペ方式を採用。指名業者の中にはあえて長谷工コミュニティを含めて、地権者の心情を配慮した。1次審査、2次審査を経て、最終的には三井不動産住宅サービス(現、三井レジデンシャルサービス)が決定となった。委託料といったコスト面より、マンションの資産価値向上への姿勢や課題解決能力、現場責任者の人事的な重要性等を重視した。

「三井の本気度合いを確信したのは、初代の事業所長に本社の人材開発部の課長を当て、実際に赴任が決定した際に面談をした時だ」と星野氏は振り返る。以降、三井は事業所長及びマネジャーにエース級の人材を配置することになる。

管理会社の変更は居住者に「良くなった」という印象を与えたが、それだけでは再建には繋がらない、最大の課題は四分の三と言う特別決議を成立するために区分所有者の責任意識(オーナーシップ)を醸成し、その意志が反映出来る管理組合の経営確立と考えた。

文=長嶋修

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