そんな中、私たちは「信用」についてどう考えるべきか。
「信用を基軸にした経済」を提唱し続けているのが、ブルー・マーリン・パートナーズの山口揚平だ。山口は2017年11月「新しい時代のお金の教科書」を上梓。著書のなかで貨幣の成り立ちや本質、展望について語っている。
貨幣経済から信用経済へ──信用のあり方が変わりつつあるいま、人と人とのつながりも今後変わっていくのではないだろうか?
山口の対談相手となるのは、「拡張家族」をコンセプトに、渋谷キャストの一角にある共同コミュニティ「Cift」を手がける藤代健介。弁護士、スタートアップ企業社長、映画監督、ミュージシャンまで、多様なバッグラウンドを持った40名ほど(2017年3月時点)が、共同生活をおくっている。
貨幣がなくなり、コミュニティと信用が結びつく「信用経済」の足音が聞こえ始めたいま、2人が紡ぎ出すメッセージに耳を傾けてみたい。
多拠点生活を営む人たちが「あえて」暮らす──意識としての家族
山口:まず藤代さんについて教えてください。2017年5月にCiftをオープンされていますが、Ciftを立ち上げた経緯は何だったのでしょうか?
藤代:大学院を卒業してすぐ、自分のデザイン・コンサルティング会社「prsm」を立ち上げました。もともと学部の専攻が建築だったこともあり、都市開発・大規模開発やまちづくりのコンセプト設計などを手がけて生活していました。それとは別軸でコミュニティにも関心があり、三年ほど前にも都内のビルを一棟貸し切って、住む・働く・過ごす・集まるコミュニティを作ったりしていました。
Ciftに関しては当初SHIBUYA CAST. APARTMENTのコンサルタントとして外部から参画していたんです。それが自分の人生的なタイミングとコミュニティへの関心なども相合わさって、気がついたら自分が発起人として内部の中心に立っていました(笑)。
山口:そうだったんですね。
藤代:Ciftの特徴は住人のほとんどがここ以外にも生活拠点を持っている“多拠点生活者”であるということ。国内外のさまざまな場所で活動しながら、渋谷をもう一つの拠点に選んで働いている多種多様な人が集まり、暮らしながら働くを共有している。
いわゆる「意識としての家族」なんです。
山口:「意識としての家族」はとても興味深いです。
いま、社会では孤独化が進んでいます。生涯未婚率も25%まで上昇。2025年には家族の構成人数が2.1人にまで低下する、と言われています。ひとつの家族に2人ということはパートナー同士、もしくは母親と子どもですよね。これまでの「家族」とは違う形態が増えていくと思うんです。
そんな中、Ciftのようなコーポラティブ・ハウジングは孤独化が進む時代に生きる人たちを救う手立てになるのではないか、と思っています。
僕自身、普段M&Aや事業投資を行うなかでソーシャルビジネスへの投資の数は増えているんです。しかし、ビジネスへの「投資」を行う場合は財務諸表や株価で成果を測ることができますが、「社会的な投資」は目標の設計がとても難しい。