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シネマ未来鏡

「万引き家族」出演者と是枝監督(右端)(Photo by Pascal Le Segretain/Getty Images)

「万引き家族」をパルムドール(最高賞)に選出したカンヌ国際映画祭の審査員たちに、まず敬意を表したい。この作品は、これまでの是枝裕和監督の作品のなかでも、到達点に位置するもので、彼がキャリアのなかで培ってきた「思考」と「技術」が結晶のように輝いているからだ。

カンヌ国際映画祭は、ベルリン国際映画祭、ヴェネツィア国際映画祭と並ぶ世界三大映画祭のひとつで、なかでも見本市も併設されているため、世界中からバイヤーが集まり、まだ企画の段階である作品まで売り買いされる。まさに映画ビジネスの最前線でもある。

最高賞はパルムドール(「黄金の棕櫚」という意味)。他にグランプリという賞もあり、こちらは当初は審査員特別賞という名称で、現在は最高賞に次ぐ作品に与えられている。

今回の是枝監督の受賞は、1954年の衣笠貞之助・「地獄門」、1980年の黒澤明・「影武者」、1983年・「楢山節考」と1997年・「うなぎ」の今村昌平(2度受賞)に次ぐ、日本の監督としては4人目の快挙だ。

是枝監督、2001年の「DISTANCE」をはじめとして7回、コンペティション部門だけでも5回、カンヌ国際映画祭に出品を果たしている。2004年には「誰も知らない」が最優秀男優賞(柳楽優弥)、2013年には「そして父になる」が審査員賞を受賞。2015年にも「海街diary」がコンペティション部門に出品されていた。いわば、このところ一歩ずつ最高賞に近づいていたとも言える。

今回のパルムドールの審査員メンバーは、審査委員長のケイト・ブランシェットはじめ、アンドレイ・ズビャギンツェフ監督、ドゥニ・ビルヌーブ監督、女優のレア・セドゥー、俳優のチャン・チェンなど、世界を代表する映画人が並ぶ。

事前に審査のポイントを問われたケイト・ブランシェットは、「俳優の演技、脚本、映像、演出など、すべての要素で抜きん出ていること。あくまで芸術的な要素から判断する」と述べていた。その言葉のままに、「万引き家族」には、これまでの是枝監督の技術の粋が凝縮されていた。

「万引き家族」は、都会の片隅で暮らす一家5人の「家族」を描いている。「祖母」の初江(樹木希林)、「父」と「母」の治(リリー・フランキー)と信代(安藤サクラ)、信代の「妹」の亜紀(松岡茉優)、「息子」の祥太(城桧吏)、一家が住む家は初江のもので、実は彼女の年金を当てにして暮らしている。

家族に「」をつけたのは、実はこの5人は血のつながりがなく、それぞれの事情から互いにこの家に身を寄せているからだ。そして、初江の年金で足りない分は、治と祥太が絶妙のチームワークで万引きしてきた食料や日用品で補っていたのだ。

是枝監督自身、「社会のなかで見過ごされがちな人々を、可視化させようと考えてつくりました」と述べているとおり、作中では隅々まで考えつくされた印象深いシーンが続いてく。

文=稲垣伸寿

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