Close

PICK UP

I write about success, leadership and communication.

カーニバル・コーポレーションCEO アーノルド・ドナルド(Photo by Lars Niki/Getty Images for LightWorkers)

言葉は重要だ。ひとつの言葉が人生やキャリアを形作ることもある。アーノルド・ドナルドの場合がそうだった。貧困層に育った彼は、ある言葉の力によって、480億ドル(約5兆3000億円)規模の企業カーニバル・コーポレーション(Carnival Corporation)の最高経営責任者(CEO)にまで上り詰めた。

ドナルドは2018年夏、世界最大のレジャー・トラベル企業である同社のCEOとして5年目を迎える。1年のうちのどの時点でも、クルーズ船で旅行中の2人に1人が、ドナルドが統括する9ブランドのひとつを利用している。彼の功績はどんな基準からみても偉業と呼べるものだ。しかし、その成功の裏には、さらに感慨深い話があった。

ドナルドは、ルイジアナ州ニューオーリンズ第9地区に暮らす貧困家庭で生まれ育った。両親は彼を、黒人専用の男子校であるセント・オーガスティン高校へ通わせた。当時はトイレ、水飲み場、教室などが人種別に分けられていた時代だった。ドナルドによると、同校では以下のメッセージが1日3回(1限目の前、昼休み、下校時)、校内放送で流されていた。そしてこれこそが、ドナルドの人生を変えた9語の言葉だった。

「Gentleman, prepare yourselves. You’re going to run the world.(諸君、準備をしなさい。君たちが世界を動かすことになるのだ)」

「この言葉を1日3回聞かされた。1日3回も」とドナルドは言う。「こう考えてみてほしい。当時の社会は、私たちに“あなたができないこと”を突き付けていた。この水飲み場で水を飲んではいけない、このトイレは使ってはいけない、あれはだめ、これもだめ……。私の通っていた高校は、そのようなものをすべて排除し、“あなたは何にでもなれる”と言い聞かせていた」

1日3回、毎日聞かされたメッセージは、外の世界から聞かされていたメッセージを上書きしはじめた。高校3年になるまでには、この力強い言葉は内面化され、人生のミッションとなっていた。

「16歳の時、フォーチュン誌の選ぶグローバル企業ベスト50に入るサイエンス系企業のゼネラルマネジャーを目指そうと決めた」とドナルドは振り返る。両親は高校こそ出ていなかったが、教育の大切さを認識し、息子の抱く大きな望みを応援した。ドナルドは、3つの学位取得を含む「プラン」を立てた。結果、32歳でモンサントのゼネラルマネジャーに指名され、目標を達成。同社で20年のキャリアを積んだ。

筆者はドナルドにこう伝えた。「あなたのようなリーダーで面白いのは、若い頃の苦労をオープンに話すこと。ハワード・シュルツは、ブルックリンの低所得者層向け公営住宅で育った過去を私に話してくれた。リチャード・ブランソンは、失読症に悩み、学校を退学になったことを話してくれた。周囲を触発するリーダーたちはなぜ、このような話を明かすのか?」

ドナルドはこう答えた。「それから多くを学べるからだ。私たちは皆、経験の産物。経験が人物を作り、思考を育てる。自分自身を構成する一部分だ。経験から得られるのは成長か破滅のどちらかだ。私の場合、経験が自分を強くした。ある意味では耐性がつき、また別の意味では自信につながった」

編集=遠藤宗生

記事が気に入ったら
いいね!しよう

LIKE @Forbesjapan

Forbesjapanを
フォローしよう

FOLLOW @Forbesjapan

あなたにおすすめ

合わせて読みたい