これはネットフリックスにならい、オリジナルコンテンツの拡充を目指すアマゾンが、ついに出版界にそのトレンドを取り入れた画期的動きだ。
コーンウェルの新作「Quantum: A Thriller」は12月3日のリリース予定で、キンドルアンリミテッド会員は追加費用無しで読むことが可能だ。また、9.99ドルを払えば非会員でも楽しめるが、この価格は米国のキンドルアンリミテッドの月額会員費と同額だ。
アマゾンは傘下の「Thomas & Mercer」を通じ、コーンウェルの今年の新作と2020年のタイトル未定の作品の2冊の英語版の国際出版契約を獲得したと、出版界のニュースサイト「The Bookseller」は伝えている。
コーンウェルの著作の販売数は累計1億冊を超え、120カ国以上で36カ国語に訳されている。また、29冊のニューヨーク・タイムズのベストセラーを送り出している。彼女の過去のアマゾンとの取り組みとしては、2017年の「The Secret Life of Walter Sickert」や2014年の「Chasing the Ripper」(2冊ともThomas & Mercerから発行)があげられる。
アマゾンは既に英国でもノンフィクションに特化した出版部門を立ち上げると宣言しており、「アマゾンのオリジナル出版の流れはイギリスにも拡大する見込みだ」とThe Booksellerは述べている。
新作「Quantum: A Thriller」の著者、パトリシア・コーンウェル
アマゾンパブリッシングのMikyla Brudeは同誌の取材に次のように述べた。「検屍官ケイ・スカーペッタをヒロインとしたコーンウェルの一連の著作は、犯罪科学小説をポップカルチャーの地位に押し上げ、映画やドラマなど、文学の枠を超えたエンターテイメントに成長させた」。
アマゾンの今回の試みは、月額費用を支払えば新作コンテンツが見放題になるという意味で、ネットフリックスと同様のアプローチだといえる。アマゾンはキンドルアンリミテッドの開始以前から、アマゾンプライムを展開し、消費者を自社のエコシステムに囲い込もうとしてきた。
出版エージェンシー「United Talent Agency」でコーンウェルの担当を務めるJeremy Barberは「アマゾンの取り組みは今後の出版業界の構造に大きな変化をもたらす」と述べている。「今回の事例は書籍コンテンツの楽しみ方の変化の方向を示している。
これまでは単品で購入し、個人の所有物として楽しむものだったデジタル書籍が、サブスクリプションで楽しむものに変わろうとしている」。