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2018.05.19 17:00

大地震から3年、ネパールで広がる「人身売買」の闇



中原一博さん(65)

日本人が自立支援施設建設で活躍


そうしたなか、人身売買の被害者たちを救おうと、現地で支援活動を続けている日本人がいる。広島県出身の中原一博さん(65)だ。チベット亡命政府のあるインド北部ダラムサラに住み、NGO「ルンタプロジェクト」を立ち上げて、チベット難民への支援を20年以上続けてきた。

地震後、ネパールに住むチベット難民への支援のため現地入りした際、目の当たりにしたのが貧困とともにある人身売買の実態だった。「彼女らを助けるには、息の長い活動が必要」そう思い、生活の拠点をカトマンズに移した。

中原さんは、実際に人身売買の被害に遭った女性が立ち上げた現地のNGOを支援する形で、2016年7月より被害者の救出活動に乗り出した。2017年末までに34人の被害者救出に成功、カトマンズにあるシェルター施設に収容し、社会復帰に向けて職業訓練などを行っている。

こうした活動を続けるなかで、浮かび上がってきたのが人身売買の被害者に対する、根深い社会の偏見だった。とりわけ深刻なのが、被害女性の中でHIVに感染した人たちへ向けられる、差別的な視線だ。女性はもちろん、胎内感染で生まれてきた子どもたちを取り巻く環境は厳しく、中原さんは「人身売買という苦しみを受け、そして社会から差別されるという二重の苦しみを受けてきた」と話す。
 
国連の統計では、ネパールの感染者は約3万9000人(15年)。NGOなどは、実際は10万人以上と指摘する。政府による感染者への保護も不十分で、家族や地域から見捨てられる女性や子どももいる。そうした人たちに生きる希望を持ってもらおうと、中原さんが進めているのが、自立支援施設の建設だ。
 
中原さんは「ルンタプロジェクト」の事業として、カトマンズから車で約1時間のバグマティ県バスドルに、約500平方メートルの土地を購入。HIVに感染した女性7人と、胎内感染した子ども14人が暮らす建物の建設を進めている。

子どもたちは隣接する公立学校に通い、近くの畑を借りて農業や園芸で生計を立てる。「援助に頼るのではなく、自分たちの力で生きていくことを目指したい」そう話す中原さんの目標は、園芸や手工芸などの事業によって、3年後に施設が経済的な自立を果たすことだ。軌道に乗れば、施設に入る人を50人程度まで増やしたいと考えている。
 
目下の課題は、建設費などの資金集め。中原さんは「地震から3年がたっても貧困の問題は解決されず、その中で、HIVの感染者はますます光の当たらない存在になっている。ひとりでも多くの人に力を貸してほしい」と話し、日本からの寄付を呼びかけている。

連載 : South Asia Report
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文=佐藤大介

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