点数に変化がなかった、または点数が下がったと回答した会社は、きちんとした調査を行ったのかもしれないが、その結果に耳を傾けなかった(ましてや結果に基づいた行動を取らなかった)のは明白だ。
行動を起こさずにいると、時が経つにつれ従業員が幻滅するだけではなく、従業員エンゲージメントを上げられないリーダーをつけあがらせることにすらなりうる。もしリーダーが従業員エンゲージメント(さらにはセクハラ加害者)を気にも留めない人だったら、会社がエンゲージメント調査の結果など顧みないことが分かっているのに、状況を変えることに何の意味を見出せるだろう? そうした人は駄目なリーダーでありつづけてよい、ということになる。
そこで、従業員エンゲージメント調査に関する私の第1のルールは次のとおりだ。会社でエンゲージメント調査を行う場合、解決方法が分からない問題については聞かないこと。簡単に聞こえるだろう?
調査で聞かれる質問は全て、その回答に基づき何らかの行動を起こすつもりだという約束を示唆している。その約束を破れば、問題が起きる。状況改善の方法が分からなければ、もしくは状況を変える気がないのならば、その気になるまでそれに関する質問はしないことだ。
さもなければ、従業員にあなたのリーダーシップ能力を疑わせてしまう土台を作ることになる。「上司があのことについてどう思うか聞くからわざわざ答えたのに、その後何の音沙汰もないなんて」というわけだ。
では、定期的な調査は実施していないと答えた34%の会社についてはどうだろう? 分かったのは、エンゲージメント調査を行わない理由の多くは、時間や予算の問題ではなく、回答を恐れているからということだ。もし、多数の深刻な企業文化上の問題や、エンゲージメントの極端に低い従業員、あるいはそれより悪い結果が出てきたらどうすれば──?
多くの人々が、命を救うこともできる健康診断を受けないのはなぜだろう? 診断自体が不快だから、という理由もあるだろうが、多くの場合、結果が怖いからだ。同様に、多くの役員が、意識的または無意識に結果を恐れ、調査を怠るのだ。
そこで、従業員エンゲージメント調査に関する私の第2のルールはこうだ。定期的にエンゲージメント調査を行うようになれば、気に入らない結果も出てくるかもしれない。しかし、もし簡単に改善できる問題を発見することができたら、あなたにとっても従業員にとっても、それがどんなに素晴らしいことかと考えてみること。
従業員による調査についてナイキから学べるのは、従業員調査は執行部に行動を促す力を持つということ。そして、どの会社も、ナイキのような状態に陥る前に、自分たちの状況をしっかり調査すべきということだ。