自分はコンドームをリュックに入れて持ち歩いているのだとひけらかす上司。女性の部下に無理やりキスしようとする上司。本人宛のメールで女性社員の胸についてコメントする上司──。
これらは問題のほんの一部に過ぎない。状況があまりにひどかったため、一部の女性社員は同僚の女性らを対象に、職場環境に関する極秘調査を実施。調査結果は今年3月にマーク・パーカー最高経営責任者(CEO)に提出され、これまでに少なくとも6人の男性幹部が退職もしくは退職を表明した。
ナイキの状況だけが特別悪い可能性もある(私はそうは思わないが)。しかし、他社での状況の詳細がどうであれ、ナイキの件が示したのは、行動を起こした女性社員の不屈の精神、そして、従業員調査が持つ力だ。
人事部への問題報告は多くあったが、役員レベルの真の変化を起こしたのは、CEOに提出された調査結果だった。こうした調査は通常、広範囲の従業員から得られた確固たるデータを示すことができ、人事部に届いた数件の個別事案よりも無視しにくい。これが従業員エンゲージメント(熱意度)調査の力でもあり、リスクでもある。
筆者が創業したコンサルティング企業「リーダーシップIQ(Leadership IQ)」は、「あなたの従業員エンゲージメント調査の有効性は?」というオンライン調査を実施。3000人以上の人事担当幹部がこれに回答した。問われた質問の一つは「エンゲージメント調査の点数は2年間でどのように変化したか?」というもので、回答の選択肢は次の4つだった。
1. 定期的に調査をしていないため分からない。
2. 点数に目立った変化は見られない。
3. 点数が低下した。
4. 以前は低かったが劇的に向上した、もしくは、以前から高得点を保っている。
当然4のみが良い結果となるが、恐ろしいことに、4を選んだ回答者はたった22%だった。対して、1を選んだ割合は34%、2は31%、3は13%だった。